FEATURE レポート紹介

医療への親しみ、子どもたちへ
=「なごやぬいぐるみ病院」=

ぬいぐるみを患者に見立て、学生が診察の流れや目的を子どもたちに伝える―。世界の医学生でつくるNGO「国際医学生連盟」日本支部(IFMSA―Japan)は医学に関わるさまざまな活動を行っており、その中でも公衆衛生、特に小児保健に焦点を置いたプロジェクト「ぬいぐるみ病院」は国内約40カ所の医学部で活動を展開している。名古屋市内では「なごやぬいぐるみ病院」が年4、5回開かれ、幼稚園児や保育園児らに医療への親しみを持ってもらうための活動を続けている。
パワーポイントなどを使って発表、議論する

小学生を対象とした“お医者さん体験”の様子。笑いと笑顔が絶えない

大学の垣根越え活動~医療系以外も参加~

愛知県内の学生が中心になった「なごやぬいぐるみ病院」の参加者は名古屋大、愛知県立大、名城大、名古屋工業大などの学生約80人。医療系学部以外の学生の参加を認めているのが他地域と異なる特徴だ。名古屋市立大看護学部2年で「なごやぬいぐるみ病院」の部長を務める山本優衣さんは「小児保健に興味ある子ども好きな学生は大歓迎」と話す。
 参加動機や目的もさまざま。名古屋大医学部2年荒川智哉さんは「多種多様な大学生との交流で、いろいろな考え方や経験を吸収できますし、人間関係も広がりますね」と期待。名古屋市立大医学部2年山口滉陽さんは「新入生歓迎会の雰囲気が良かったので参加を決めました。私自身子どもが好きなこと、また活動が公共的なこともその理由です。卒業後は小児科で働くのが目標なので、経験を生かしたいです」と将来の夢を語った。

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左から名古屋大2年の荒川智哉さん、名古屋市立大3年の近藤彩乃さん、同2年の山本優衣さんと山口滉陽さん

学生に最高の学び場~「病院怖い」変えたい~

「ぬいぐるみ病院」のプログラムは大きく分けて三つ。第1は名前にあるように、子どもたちにぬいぐるみを持参してもらい、ぬいぐるみを患者に見立て、診察の流れなどを伝える。子どもがぬいぐるみの「親」、学生が「医師」「看護師」になってロールプレーを開始。「診察室」での会話を通じ、医療への親しみを深めてもらうのが目的だ。
 次に子どもが「医師」になってのロールプレー。聴診器や体温計など実際の医療器具を使って、患者役の学生を診察する。三つ目は座学を中心とした保健教育。風邪や虫歯の予防などで役立つ方法を教えていく。
 大学生と幼稚園児、保育園児のふれあいで、現場はいつも和気あいあい。ただ、活発な子どもを相手にするのでエネルギーも必要だ。
 「大変なこともあります。でも基本的にはみんな子ども好きなので楽しんで活動していますね」と名古屋市立大看護学部3年の近藤彩乃さん。「子どもたちは『今度から注射頑張る』とか『ちゃんと病院行くね』とか言ってくれる。病院を『怖い』と思う子どもは意外と多い。そのイメージを少しでもいいから変えたいですね」
 ぬいぐるみ病院は学生にとっても「最高の学び場」。参加者は月に1度、学生同士の勉強会を開催、先輩のアドバイスを受け知識を深めている。

パワーポイントなどを使って発表、議論する

活動場所は大学内のほか、小学校や幼稚園などさまざま。学童保育へ出向くこともある


パワーポイントなどを使って発表、議論する

クイズ形式で子供たちの興味を引いていく。「これをやってみよう!」とアイデアを生かせるのが面白さ

 

「夢中へ」アイデア凝らす~学生だからできることを~

子どもは集中力が続かず飽きやすい。ぬいぐるみを使ったロールプレーや、お医者さん体験などで学生側が一方的に説明しても、じっと耳を貸すことはない。そこでアイデアが重要になってくる。
 「医療の世界について、説明をかみ砕いて分かりやすく、いかに夢中にさせるかが大切」と山本さんは話す。なごやぬいぐるみ病院では多くの場合、クイズ形式でプログラムを進行する。子どもたちに考えさせ興味を引くのが狙いだ。保健教育でも寸劇などを導入し、印象づけるための工夫を凝らしている。
 プロジェクト終了後は毎回、学生たちだけで反省会を開催。どうすれば楽しい伝え方ができるか、次回に生かせるかなどを徹底的に話し合っている。子どもへの愛情が次々と新しいアイデアを生み出していく。そして「病院が怖くなくなった」と子どもたちに言ってもらえることが、彼ら彼女らにとって最高の瞬間だ。
 最後に近藤さんがこんなすてきな言葉を残してくれた。「私たちは白衣を着たお医者さんではありません。でも、そんな学生だからこそ、子どもたちにできることってあると思います」

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