一流に学ぶ 人工股関節手術の第一人者―石部基実氏

(第5回)知らないうちに父の保証人=3億円の負債抱え込む

 仕事面では順風満帆の日々を送っていた石部氏だったが、ある日、父の会社の社員が会いたいと言ってきた。

 「社長の経営がおかしいので財務状況を見てほしいという話でした。段々売り上げが下がってきて利益も出なくなり、社員が『これはまずい』と私に相談しに来たのです」

 その前にも同じような話があり、父を問い質したことがあった。しかし、父は何も答えなかった。実はこの時、父の会社はいよいよ危ないという段階になっていた。

 「調べていくうちに、米国に留学している間に僕が父の保証人になっていたことが分かりました。サインも印鑑も作られていました」

 負債額は3億円にも上った。たまらず、税理士に会いに行った。

 「もう保証人を辞めたい」

 「そんなことをしたら、お父さんの会社はつぶれちゃうよ」。税理士にそう言われ、「もう後は父の借金を返すだけの人生になるのかな、と思いました」

 ◇苦境で救いの手

 3億円もの借金を背負わされる。実の父がしたことはいえ、つらいものがある。父にこう言った。

 「この会社はもう駄目だから、畳んだ方がいい」。父は最初「うん」と言ったが、結局は「俺はこのまま続ける」と譲らなかった。そんな折に偶然知り合った人物が、苦境を知って援助を申し出てくれた。

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一流に学ぶ 人工股関節手術の第一人者―石部基実氏