出産 家庭の医学

コラム

お産にかかる費用

 お産(入院して分娩〈ぶんべん〉、退院まで)にかかる費用は日本では40万~60万円が平均で、地域や施設によって異なります。これとは別に妊娠中の健診(24週未満は4週間ごと、以降は2週間ごと、36週目以降は毎週)の費用は施設によって異なりますが、公的負担がない場合は5000円程度はかかり、ほかに検査代が必要です。
 妊娠・出産は基本的に医療保険が適用されませんが、産後に、被用者保険(健康保険、船員保険、共済組合)、一般の被保険者が加入している国民健康保険から出産育児一時金や出産手当金が支給されます。出産育児一時金、出産手当金は産後2年以内の申請が必要です。
 なお、帝王切開など異常分娩で出産した場合は健康保険が適用されます。
 その他、無痛分娩や計画分娩、個室料金などが別途かかります。
 2023年5月現在、国は正常分娩に対しても保険適用にできるか、検討をはじめています。

■出産育児一時金
 被用者保険では、本人か配偶者の加入している組合から50万円が支給されます。退職していても退職するまでが勤続1年以上で、かつ退職後半年以内に出産した場合も支給されます。国民健康保険に加入の場合も同じく50万円が支給されます。
 多胎である場合は人数分が受け取れます(流産・死産の場合も妊娠12週+1日以降であれば支払われます)。

■出産手当金
 出産した本人が被用者保険の加入者の場合(退職した場合は条件あり)、標準報酬の日額の約6割が一定期間分、出産手当金として受け取ることができます(死産の場合も支給されます)ので確認してみてください。国民健康保険では出産手当金はありません。

■出産・子育て応援交付金
 妊娠届出時(5万円相当)、出生届出後(5万円相当)の2回に分けて、10万円相当の経済的支援を受けられるものです。

 昨今の少子化で女性1人あたりの出産回数が減っており、女性にとってお産は一生に1度か2度の貴重な体験として受けとめられるようになってきました。それだけに個室で快適に過ごす、パートナー(夫)や家族の立ち合いのもとでの分娩や無痛分娩を選択するなど、満足感を得られるお産であれば多少費用がかかってもよいという風潮があるようです。

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 名誉院長 安達 知子