熊本地震では多くの子どもも被災した。強烈な揺れで心に傷を受け、専門家のケアが必要な児童生徒が今も確認されている。感情を言葉で表現できず、ストレスを蓄積させている子どもが潜在的に多くいるとみられ、教育現場は息の長い取り組みを求められている。
 被害が激しかった地域にある熊本市内の小学校。校長によると、「頭が痛い」など体調不良や、「夜が怖い」「いらいらする」といった不安を訴える児童が保健室を訪れる。発災直後は週20~30人、今でも10人前後いる。続く余震が記憶を呼び戻し、神経質にさせる要因になっているという。
 対応する30代の女性養護教諭は「リラックスできる雰囲気をつくり、しっかり話を聴くように接している」と話す。爪をかむ、髪を引っ張るなど、日常のしぐさや行動から発せられるサインを見逃すまいと、派遣されたスクールカウンセラー(SC)と連携し児童を見守っている。
 熊本市教育委員会は、市内の小中学校計137校に通う約6万人を対象に、昨年5月から心と体の観察調査を6回実施した。SCによる心のケアが必要と判断されたのは、初回調査で2143人。その後減少しているが、調査のたびケアが必要な子どもが新たに見つかり、市教委は問題の根深さを改めて認識した。
 市教委総合支援課の担当者は「気持ちや感情にふたをしたり、我慢したりする子どもが潜在化していることを示しており、2~3年は続く」とみる。専門医によれば、阪神大震災や東日本大震災で被災した子どもの一部には、数年を経て心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症させたケースもあるという。
 県や市は、児童精神科医ら専門家と協力し「心のケア サポート会議」を昨年8月に発足させた。心のケアの司令塔として、子どもたちの自己回復力を高めるプログラム作成などに当たる。
 それでも、子ども一人一人の個性や遭遇した状況が違うため、学校現場では個々に応じた難しい対応が迫られる。SC派遣を支援する熊本県臨床心理士会の江崎百美子会長は「心に負った傷は見えない。周囲には息長く支えていく作業が求められる」と話す。 (C)時事通信社