治療・予防

脳の血流低下で起こる失神
原因によって異なる対処法(聖マリアンナ医科大学東横病院失神センター 古川俊行准教授)

 血圧と心拍数が下がり、脳への血流量が減って意識を失う「失神」。大抵は数分で自然に意識が戻るため命に関わることはないが、危険な病気が隠れている場合もある。聖マリアンナ医科大学東横病院失神センター(川崎市)の古川俊行准教授に対処法などを聞いた。

失神の主なタイプ、原因と特徴

失神の主なタイプ、原因と特徴

 ▽自律神経の乱れが影響

 失神は原因別に、大きく三つのタイプに分類される。

 最も多いのが自律神経の乱れによって起こる「反射性失神」だ。神経調節性失神、血管迷走神経反射とも呼ばれ、満員電車や朝の全校朝礼など長時間立ったままの姿勢を取った時などにしばしば生じる。強い痛みや精神的ショック、ストレスなどが誘因となって自律神経のバランスが崩れ、心臓の動きが遅くなり、血圧が下がることで引き起こされる。「会社で上司に叱責される、せきをする、排尿など引き金はさまざまで、誰にでも生じます」と説明する。

 一方、立ち上がったりした時に、心臓への血流量が低下して血圧が下がって起こる「起立性低血圧」により、失神が生じることがある。

 いずれも睡眠不足、脱水、朝食を抜くなどすると脳への血液量が減少して発症しやすくなる。そのため、特に失神を何度も経験している人は、睡眠時間を十分確保する、水分を十分摂取する、朝食を必ず食べる、疲労をためないなど生活習慣の見直しが大切だ。

 ▽他の症状ないなら要注意

 反射性失神や起立性低血圧は、めまい、悪心(おしん)、冷や汗など何らかの前兆が見られ、意識消失後に数秒から数分以内に自然に回復し、後遺症は残らない。

 これに対して、脈が速くなったり遅くなったりして脈が乱れる不整脈によって起こる「心原性失神」は、予兆もなく突然倒れ、数分経過しても意識が回復しないことがある。呼吸が止まり、突然死につながる危険性もあるため、救急搬送を要請し、心肺蘇生を行う必要がある。

 それでも、失神の大半は自然に意識が戻るため、軽く考えて受診しない人が多いとされる。「自律神経の一時的な変調が原因で起こる失神は寿命に影響はないと言われていますが、放置すると危険なタイプもあります」と古川准教授は指摘する。「失神を一度起こして不安を抱えている人や繰り返す人は、一度循環器内科を受診して心臓の病気がないかを確認しましょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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