教えて!けいゆう先生

「最後に〇〇したのは?」
病院でよくされる質問(外科医・山本健人)

 患者さんが病院でよくされる質問に、「最後に〇〇したのはいつか?」というのがあります。不意に問われると答えにくい場合も多く、答えに窮してしまう患者さんもいます。

 「最後に〇〇」にはどんなものがあるでしょうか?

 代表的なものを簡単に紹介します。

医者が「最後に○○したのはいつですか?」と質問するのは、どういう時か

医者が「最後に○○したのはいつですか?」と質問するのは、どういう時か

 ◇最後の排便

 おなかの症状で外来にやってきた患者さんに、私たちがよくするのが、

 「最後に排便したのはいつですか?」

 という質問です。これを患者さんに問い、カルテに「最終排便は3日前」といった記載をします。

 最終排便がいつか分かると、どのくらい便が出ていないかが分かります。長期的に排便がないなら、腸の動きが悪くなっているのかもしれない、と想像できます。場合によっては、腸閉塞など重要な病気の診断につながることもあります。

 また、排便と同じかそれ以上に重要なのが「排ガス」です。「排ガス」とは「おなら」のことです。便が出ていなくても、ガスがよく出ているなら、腸が活発にぜん動運動している、と考えることができるからです。

 ◇最後の月経

 女性の場合は、病院で「最終月経」を問われることがあります。最終月経とは、直近の月経が始まった日のことです。

 妊娠週数や分娩(ぶんべん)予定日を知る際に、最終月経を0日としてカウントするほか、おなかの症状・性器出血・月経の異常で受診した患者さんについては、その症状の原因が妊娠に関わるものでないかどうかを知るためにも、最終月経の情報が必要になるのです。

 ◇最後の飲食

 全身麻酔の緊急手術が必要になった患者さんは必ず、

 「最後に飲食をしたのはいつですか?」

 という質問をされます。多くの場合、こう尋ねるのは手術を担当する麻酔科医です。

 直前に飲んだり食べたりして胃の内容物がたっぷり入っていたら、全身麻酔を導入する際にそれが逆流して誤嚥してしまう、つまり、吐物が気道に入ってしまう恐れがあります。

 事前に予定された手術なら、患者さんは飲食禁止の指示を受けていますが、緊急手術ならそうはいきません。ご本人も、まさか自分が手術を受けることになるなどとは予想もしていないからです。

 そこで麻酔科医は、こうしたリスクを把握し、麻酔導入の方法を変える必要性を知る意味で最終飲食を問うのです。

 以上のようなことは、突然問われると思い出すのが難しく、答えづらいことも多いでしょう。少し頭の片隅に入れておくと、落ち着いて回答できるかもしれません。

 ぜひ参考にしてみてください。(了)

監修:柴田綾子(産婦人科医)

 ◇山本 健人(やまもと・たけひと)氏
 2010年、京都大学医学部卒業。複数の市中病院勤務を経て、現在京都大学大学院医学研究科博士課程、消化管外科。Yahoo!ニュース個人オーサー。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、開設2年で800万PV超を記録。全国各地でボランティア講演なども精力的に行っている。

 外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医など。著書に『医者が教える正しい病院のかかり方(幻冬舎)』など多数。当サイト連載『教えて!けいゆう先生』をもとに大幅加筆・再編集した新著『患者の心得ー高齢者とその家族が病院に行く前に知っておくこと(時事通信社)』は2020年10月下旬発売。

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