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ストレス多いシングルマザーの子育て
目立つ喫煙や飲酒習慣―国立成育医療研究センター

 子育て支援の重要性が訴えられて久しい。中でも母親1人での育児は負担が大きく、社会的な支援の必要性が強調されている。それでも1人で育児を担う母親は多くのストレスを抱えており、飲酒や喫煙などの比率は2人親世帯だけでなく、3世代で同居している場合と比べても高いなど、1人親に対する養育支援は十分とは言えないことが国立成育医療研究センターの調査から見えてきた。

(国立成育医療研究センターの資料を基に作成)

(国立成育医療研究センターの資料を基に作成)

 ◇中程度以上の精神的不調が突出

 同センター社会医学研究部の加藤承彦室長らは、2016年の国民生活基礎調査のデータを使い、5歳以下の子どもがいる母親(50歳以下)の心身の健康状態や生活状況について、2人親世帯とシングルマザー世帯を3世代同居の有無で4グループに分けて分析した。調査対象は約1万9000世帯で、母親の平均年齢は30代だった。

 精神的な不調を、6項目の質問に答えてもらう国際的な尺度で見ると、不調の度合いが軽度と判定された割合は4グループの間に大きな差は無かったが、中程度と重度の不調は「3世代同居していない1人親」世帯が目立って高かった。 

 逆に、「不調でない」と評価された割合は、他の3グループでは7割以上だったのに対し、「同居していない1人親」世帯では59%。自身の健康状態に対する評価(主観的健康状態)についても、「悪い」との回答が他の3グループに比べて多かった。

 さらに加藤室長が注目しているのは、喫煙や飲酒など、高いストレスにさらされている場合に代償的行為として頻度の高まる生活習慣だ。喫煙や飲酒は、妊娠時から医師や保健師、助産師などから、健康に悪影響を及ぼすと教えられているため、「体に良くないと分かっていてもたしなまざるを得ない、という環境に置かれていると捉えることができる」と説明する。

(国立成育医療研究センターの資料を基に作成)

(国立成育医療研究センターの資料を基に作成)

 ◇3人に1人が毎日喫煙

 結果を見ると、喫煙については、3世代同居ではないシングルマザー世帯では「毎日吸う」が32%と、約3人に1人に上り、他のグループを大きく上回っていた。飲酒についても、「毎日」(12%)や「週に3~6回」(11%)など、他のグループに比べて高い頻度で摂取していた。「これらの生活習慣は子どもの健康や成長にも悪影響を与える可能性が高い。子育て面への影響についても継続的な調査が必要と考えられる」と同室長は話している。

 この調査について、同センターの「こころの診療部乳幼児メンタルヘルス診療科」の立花良之診療部長は「保護者のメンタル面での不調は子どもの心身に大きな影響を与えてしまう。一方で、子どもを単身で育てている母親の間でも、ストレスの感じ方や周囲の環境に大きな違いがある。ただ、いずれにしても、子どもを1人で育てるということは、お母さんにとってとても大変なこと。そのようなお母さんを社会がサポートする仕組みづくりが重要」と語る。

 その上で、「喫煙や頻回の飲酒といった生活習慣は、多くの人が嗜好(しこう)するもの。しかし経済的、社会的に厳しい環境に置かれている人がこのような嗜癖にはまってしまい、日常生活に悪循環を生じてしまうことがある」と、心理社会的リスクのある人がこれらの生活習慣にふけることはストレスや心理状態を評価する指標になると認める。

 実際、小児診療の現場でも、これらの生活習慣の有無について親に問うことはあると言い、「ストレスの負荷がある程度までなら、医師をはじめとしたいろいろな職種が相談に乗ったり社会的な支援に誘導したりすることで対応できるが、精神的な問題がある程度以上になれば医療的な支援が必要になる」と自身の体験から分析している。(了)

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