インタビュー

骨粗しょう症予備軍2000万人=斎藤充医師に聞く(上)

 骨粗しょう症は骨がもろくなり骨折しやすくなる病気だ。近年、骨が圧迫されて気付かないうちに骨折している「いつのまにか骨折」というフレーズでも知られるようになった。日本骨粗鬆(しょう)症学会によると、急速な高齢化により、骨粗しょう症患者は1300万人を超え、予備軍を含めると2000万人と推測されている。かつては閉経後の女性の病気と思われていたが、男性の患者も増加傾向にある。骨粗しょう症の研究や治療に詳しい慈恵医科大学整形外科教授の斎藤充氏に最新事情について聞いた。


◇破骨細胞の反乱

―骨粗しょう症になると、なぜ骨折しやすくなるのか。

斎藤 骨は新陳代謝が活発で、年間に40%が入れ替わる。老朽化すると、骨の作り手「骨芽細胞」がランクルというタンパク質でシグナルを出す。壊し屋である「破骨細胞」が集まり、老朽化部分を壊して削り取り、その後に骨芽細胞が修繕を始める。性ホルモンが減少すると、ランクルを分泌し過ぎて破骨細胞が反乱を起こし、過剰に骨を削る。骨芽細胞は削った部分の修繕作業が追い付かなくなる。つまり、骨の吸収が骨の生成を上回り、骨の中に穴が開いてスカスカになった状態が骨粗しょう症だ。

若い頃にカルシウムをしっかり摂取し、適度な運動を行うと、骨のカルシウム貯金が高くなり、骨の老化は緩やかになる。

 ◇男性も注意が必要

―閉経後の女性だけが注意すればいいのだろうか。

 斎藤 男女問わず、カルシウムの貯金が少ない人、ホルモン療法を行っている人、生活習慣病の人などは骨粗しょう症のリスクが高いと考えてよい。

女性の場合、性ホルモンが減少するのは、閉経後だけではない。若い女性でも月経不順や無理なダイエットによって、エストロゲンが機能していないと骨密度が減る。男性の場合も更年期になると年に1%と、緩やかにアンドロゲンが減り、女性と同様に破骨細胞が活発になることが分かってきた。現在、男性の骨粗しょう症もしっかりと定義されている。さらに、婦人病や乳がん前立腺がんでホルモン療法や抗がん治療を行っている場合は薬によって性ホルモンを抑制しているため、骨へのダメージは大きい。ホルモン療法を行うと骨のカルシウムは2倍のスピードで減っていく。


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