FEATURE レポート紹介

目を背けず、自分らしく生きてほしいから
=性と生殖・AIDSに関する委員会-SCORA=

 SCORA(Standing Committee on Sexual& Reproductive Health including HIV/AIDS)は、日本最大級の医療系学生団体IFMSA-Japanの常設委員会の一つだ。若者の性に関する知識や意識を向上させることを目指し、AIDS(後天性免疫不全症候群)とその原因ウィルスであるHIV(ヒト免疫不全ウィルス)やセクシュアル・マイノリティー(性的少数者)ついての理解を深めることを目指している。

デリケートな問題と向き合う

性やHIV/AIDSに関する問題について向き合うのは少し勇気が必要に思う。最近、よく耳にするようになったLGBTs(女性同性愛者Lesbianや男性同性愛者Gayなど性的少数者を表す単語の頭文字を組み合わせた言葉)もそうだ。ほかにもデートDVや性的暴力などデリケートな問題への理解を深めて、偏見や差別を無くしていくために活動しているのがSCORAだ。
 主なプロジェクトに「Peer Education Project」と「Rainbow Flag Project」があり、2017年からHIVと梅毒への感染を未然に防ぐための「STI(性感染症)予防プロジェクト」もスタートさせた。
 昨年度Peer Education Project責任者を務めた大和美寿々さん(群馬大6年)は、「性やLGBTsに関する悩みを相談できない学生は非常に多いと思います。そうした若者に対して、少しだけ年の離れた私たちだからこそ、力になれることがあるのではないでしょうか。相談の際には、告白を強制するのではなく、まずは本人が話しやすい機会を設けることが大切だと考えています」と話す。

世界総会で撮影した世界各国の
SCORAのメンバーとの記念写真

写真左から大和美寿々さん(群馬大6年)、
森 重智さん(福岡大4年)、野村彩華さん(愛知医科大4年)、
西川 裕里香さん(横浜市立大3年)、
鮫島甲太さん(日本医科大4年)、
三浦子路さん(旭川医大4年)

訪問授業の様子。スライドを使うなど工夫して行っている

医学生だから相談できることがある

「Peer Education Project」では、全国各地の中学・高校で性教育に関する訪問授業を行っている。内容は、コンドームの正しい使い方や生理についてなど。生徒数人が大学生を囲んで話し合うグループワークであったり、全校生徒の前で講演を行ったりと形式はさまざまだ。
 「相手は思春期を迎えた生徒たちです。デリケートな問題でもあるので、学校によっては『この単語は使わないでほしい』と事前にお願いされる場合もあります。一方で『制限は設けないから自由にやってほしい』という要望も。『校内でデートDVがあったから、それを話題にしてほしい』と具体的に相談されることも少なくありません」(愛知医科大4年の野村彩華さん)
 ここでは「医学生であること」が重要な意味を持っている。医学生は中学生や高校生にとって年が近い先輩のような存在だ。教師ではなく医学生が代弁することで「伝わりやすいし、真剣に捉えてもらえる」と考えている学校が多いという。訪問授業の回数も年々増加し、「私たちが必要とされているのを感じます」と野村さんは話す。

LGBTsの象徴であるレインボーフラッグを掲げて行進する
「東京レインボープライド」に参加

自分を否定せず生きてほしいから

「Rainbow Flag Project」は、セクシュアル・マイノリティーの社会的認知度と理解の向上を医学生の立場から進めている。
 鮫島甲太さん(日本医科大4年)は、「電通ダイバーシティ・ラボの調査によると、LGBTsの人たちは14人に1人の割合で存在するとされています。これは左利きの人と同じくらいの割合です。でも、日常生活の中で、それほどLGBTsの人が存在するようには感じませんよね。つまり、告白できない人たちが大勢いるわけです」と現状について説明する。
 SCORAの中にも自らがLGBTsであることを悩んでいた若者が少なからずおり、ある学生はこう告白してくれた。
 「中学校の頃からLGBTsだと自覚していましたが、誰にも相談できず、つらくて何度も自殺しようと思いました。高校卒業後、海外の大学に進学したのですが、そこでLGBTsに理解がある社会が存在することを知りました。大きな転機でしたね。帰国後、医学部に入学してSCORAを知ることに。SCORAは私にとって安らげる居場所のようなもの。理解してくれる仲間の存在は自信につながっています。悩んできた私だからこそ、できることがある。それを発信するのが今の役目だと感じています」。
 性に関する悩みを告白するにはためらいが生じる。特に日本人はその傾向が強い。しかし、SCORAのように寄り添える場所は必ずある。そして、実際に救われている人たちもいる。
 「抱え込んでいても悩みは解決しません。私たちは伝えるべきことを伝えて、一人でも多くの人が性に関する問題で悲しむことがないように変えていくのが目標です。『自分らしく生きてほしい』それが私たちの願いです」(横浜市立大3年の西川 裕里香さん)。