FEATURE レポート紹介

主体的に学び続けること
=医学教育に関する委員会-SCOME=

 SCOME(Standing Committee On Medical Education)は、日本最大級の医療系学生団体IFMSA-Japanの常設委員会の一つだ。「Life Lesson Project」と「チーム医療Project」という二つのプロジェクトを軸に、自分たちに必要な医学教育について自ら考え、より良い医療従事者になることを目指して活動している。

与えられた医学教育を見つめ直す

SCOMEは大学の医学教育を見つめ直す。医学部や看護学部などのカリキュラムは免許や資格を取得するための知識の補完であって、それだけでは補い切れない部分が必ずある。その欠けている部分を「自分たちから意欲的に学んでいく必要がある」と感じている医学生の集まりだ。
 プロジェクトの一つは、人生観や死生観について知り、理解を深めていく「Life Lesson Project」だ。大塚天心さん(福島県立医科大3年)はこの活動の趣旨について、「社会ではさまざまな価値観を持った方々が生活しています。例として宗教観が挙げられるでしょう。多様な価値観に理解がないと、無意識のうちに患者さんを傷つけてしまう可能性があります。そうした事態を避けるために人生観や死生観について学んでいます」と説明する。

左から首都大学東京3年の鳥居香菜さん、
福島県立医科大3年の大塚天心さん、東北大3年の林明澄さん

世界総会での記念撮影。
海外の医学生と教育事情について情報を交換する。

「チーム医療Project」では
他の職種の役割についても学んでいる

医学生以外とも交流

もう一つのプロジェクトは「チーム医療Project」だ。こちらは名称の通り、医療の現場で浸透しつつある「チーム医療」の在り方について学ぶ。
 医学部の林明澄さん(東北大3年)は「実際の臨床現場に近いのが特徴です。チーム医療Projectに限りませんが、これから起こりうる状況を考えてから企画を立てていくことが多いです。将来役立つことを実践的に学べる場所だと感じています」と話す。
 「チーム医療Project」の活動にはユニークな側面がある。それは医学生だけではなく、理学療法士や医療ソーシャルワーカーを目指す、さまざまな学部の学生が参加している点だ。
 「私たちは医学部や看護学部の世界しか知りません。専門性が強い分野のため視野は狭くなりがちです。でも『チーム医療Project』では、他の学部の学生たちがどのような考えを持ち、何について学んでいるかを知ることができます」(林さん)。
 こうした交流について、健康福祉学部の鳥居香菜さん(首都大学東京3年)は「さまざまな学部の人間がいることがSCOMEの特色ではないでしょうか。学年も住む地域も違う。そうした学生たちと触れ合えるのは刺激になります。SCOMEに参加して多くの仲間と出会えましたし、将来の財産になると感じています」と語る。

コミュニケーション能力を養うワークショップなどを
自分たちで企画して開催

主体性を身に付ける場所

同じ医学部や看護学部でも、大学によって講義の内容は異なる。それが結果として知識の差となって本人に返ってくる。そうした不利益を軽減する活動も考えている。
 「同じ医学部に入り、同じカリキュラムを学んできたのに、卒業する大学によって大きな差が生まれる。それは医療従事者として危険なことだと考えています。そこで多様な大学の医学生が集まるIFMSA-Japanの特性を生かし、受ける教育について共有を図ろうと考えています。正式なプロジェクトとしてはスタートしていませんが、実現できれば必ず有意義な取り組みになると思います」(大塚さん)。
 SCOMEの活動はどれも主体的だ。しかし、学生が中心となって活動するのでうまくいかないこともあれば、答えが出せないテーマに苦悩することもある。それでも「共に学んでいくこと、その姿勢が大切」と大塚さんは指摘する。
 「私自身、高校までは与えられた課題にひたすら取り組むような人間でした。でも、SCOMEで多くの仲間と出会って『自分から学ばなければならない』と感じるようになりました。自分から学び続けることで、漠然とした将来像もピントが絞れて鮮明になってきます。主体性を身に付けること。それがSCOMEの根幹かもしれませんね」(大塚さん)。