FEATURE レポート紹介

助かる命を一人でも多く救いたい!
=慶応大学救命処置普及クラブ=

「ある日、道を歩いていると、あなたの目の前で突然人が倒れました。医師や看護師であるあなたは、その人を助けることができますか」-。

慶応大学の医学部・看護医療学部・薬学部の学生が参加する公認団体「KAPPA」(慶応大学救命処置普及クラブ)は、医療従事者を対象にした高度な救命救急処置法の普及を目的に2002年に設立された。KAPPAは救命救急処置法のうち、心停止のみを対象とした救命法「ICLS」(用語解説)を実践的に学ぶとともに、講習会を年に4回開催している。運営を担う會田卓弘代表、岸本ゆりえ前代表ら5人に活動内容と救急救命にかける思いなどを聞いた。

左から、増渕さん、岸本さん、小関さん

――KAPPAには、どのような人たちが入会するのでしょうか。活動の内容についても教えてください。

岸本ゆりえ前代表KAPPAは設立から16年目となります。シミュレーションしながらの実践練習には、ある程度の医学知識が必要ですから、医学部であれば4年生以上、看護学部は3年生以上、薬学部は5年生以上が入会資格となっています。

週に1回、授業後に勉強会を行っているほか、1年生の必修科目である一次救命処置の授業のお手伝いに行くこともあります。ICLSの講習会では、指導のためOBにも来ていただいています。

――ICLS講習を受講すると、何か資格が取得できるのでしょうか。

小関真子副代表ICLS講習は日本救急医学会の公認講習となっていますので、講習会に参加するとICLSの資格認定が取得できます。さらに、アシスタントインストラクターの修了証も取得できます。受講者は将来、救急救命医を目指す学生はもちろん、救急救命に興味があり、いざという時のために知っておきたいという人が多いです。1回の講習会で 18人が受講していますので、今までに延べ750人以上が受講しています。

講義は視覚聴覚に訴える飽きさせない工夫がいっぱい

心停止をきたす心電図波形の判読、それに応じた治療法をチームで考え、迅速に行います。医学部、看護医療学部、薬学部を問わず、ICLSを基礎から身に着けられるように丁寧に指導します。受講にあたって事前の知識は一切必要ありません。

――週1回の定例の活動ではどのようなことを行っていますか。

岸本前代表毎週水曜日、シミュレーションラボで実践練習を行っています。授業は講義が中心で、シミュレーションを行ったとしても人形に触れられる人はごく少数です。授業を受けた後に何度も練習して慣れておくことで、実際に倒れている人を目の前にした時にちゅうちょせず行動できると思います。

シュミレーションラボでの実習練習。チームに分かれて小グループで行われる

脳に血が流れなくなると酸素が欠乏し、生存が危ない状態に陥ります。心肺停止に陥った人の生存率は、1分間で10%ずつ低下していくと言われています。つまり、心停止は10分放置すれば危険な状態です。頭で分かっていても、実際にそういう現場に遭遇した時に、いきなり行動に移すことは難しいと思います。学生のうちから学び、シミュレーションといえども経験しておくと感覚がつかめます。

――入会のきっかけを教えていただけますか。

千田晋太郎副代表蘇生法を1回ぐらいやってみようと思い、講習を受講しましたが、一日受けただけではとても覚えきれない。団体の雰囲気も楽しそうでとてもよかったので、入会しました。

小関真子副代表大学からの案内がきて知り、講習会を受けました。人形相手でもこの講習会だけでは習得できないと思いました。今は胸骨圧迫の方法や、力の具合も分かるようになりました。いざ救急の現場に居合わせたときにも動けるのではないかと思います。実際に救急の臨床実習を回った時に、救急の患者さんに対して、人手が足りなくて手伝ってほしいと言われたことがあります。KAPPAでの経験がなければ動揺していたに違いありません。

左から、代表の會田さん、副代表の増渕さん、岸本さん、小関さん、千田さん

岸本前代表私の場合は部活の先輩がKAPPAにも入っている人が多かったので、4年生になったら入ろうと思っていました。5月の講習会の前に偶然、道で倒れた人を見た時に何をしたらいいかわからなかったので、絶対に入るべきだと思いました。実際に入ってみて、現場をイメージできるようになりました。

増渕颯副代表みなさんが言うように、救急時の対応は講習会1日だけだとすべてマスターするのは難しいし、すぐに忘れてしまいます。いざという時に頭と体に記憶が残り、すぐに体が動かせるようになると思い、入会しました。自分が勉強するだけではなく、どうやったら講習生に分かりやすく伝えられるかと考える機会が多く、コミュニケーションスキルの面でもたいへん勉強になります。

會田卓弘代表私は救急科の医師になろうと思ったわけではありませんが、どの科に行っても、心停止の患者さんはいるので、ICLSなどの習得は絶対に必要だと先輩に言われました。そう思って講習会に参加しました。今は、多くの学生たちに広く救命法を知ってもらって救命を行える医療者が増えることにより救える人が増える、そう思うと、とても素晴らしいことであり、やりがいもあります。また、人に理解してもらえるように分かりやすく教えることは自分自身の勉強にもなります。

【用語説明】

ICLS:医師卒後臨床研修の必修項目として明記されている二次救命処置を習得するために、学習目標を「突然の心停止に対して最初の10分間の適切なチーム蘇生を習得する」として「ACLS基礎(ICLS)コース」を設定。2002年10月から各地でコースを主催、2004年4月からはコース認定基準を設けて、コースの認定申請受付および学会認定作業を行っている。(日本救急医学会指導者養成ワークショップ概要より)