FEATURE レポート紹介

楽しみながら医学英語を習得
多くの大学と活発に交流
=日本国際医学ESS学生連盟=

インバウンド(訪日客)の増加、外国人労働者の受け入れ、2020 年東京五輪の開催などを背景に、訪日外国人に対する医療サポート体制の必要性が高まってきている。医学生有志の団体「Team Medics」は、日本を訪れた外国人が体調を崩したときに英語で医療サポートを行うことを目的にしている。もともとは、東京五輪を念頭に医療サポートを行うボランティアの育成サークルとして設立された。代表の横島健人さん、メンバーの松根佑典さんと石本あゆさんに話を聞いた。

◇医学英語の勉強会が前身

――設立の経緯を教えてください。

松根さんはじめ、日本大学医学部で医学英語教育を担当していた押味貴之先生(現・国際医療福祉大学准教授)が中心になって医学英語の勉強会を立ち上げました。それが前身と聞いています。初代代表の鈴木あみさん(現・日大医学部5年)によると、15年にその勉強会を発展させ、東京五輪を念頭に医療英語のボランティアサークルとして発足しました。

国際的な医療の現場で働きたいという学生は、医学と英語を両方勉強する必要があり、最初は勉強会だけを開催していました。でも、単に学ぶだけでなく、実践で生かせるアウトプットの場として、東京五輪を目標にしたそうです。現在、東京五輪での公認英語医療ボランティアの登録を目指して活動しています。

松根佑典さん

――具体的な活動内容は。

横島さん16年4月から月に1回、3時間程度ですが、押味先生や外国人講師を招いて医学英語の勉強会「Tokyo MEDS (Tokyo Medical English Discovery Seminar) 」を開催しています。実用的な知識と技術を習得できる貴重な機会となっています。医学生は無料で、社会人は有料ですが、参加しています。社会人の方は、通訳の仕事をしている人もいて、教えてもらうことも多いです。

横島健人さん

――目前に東京五輪という目標があると、力の入り方も違ってきますね。

松根さん漠然と国際医療に取り組みたいとか、海外の臨床医学に興味があるとか、思っていても、具体的に捉えることは難しいので、当面の目標として東京五輪を念頭に置こうと決めています。東京五輪では選手を含め、たくさんの外国人が来るので、自分たちが学んできたことが実践できる絶好の機会です。

押味先生の講義は、基本的に発熱とか、毎回、症候学をテーマに絞って行われます。5、6年の海外選択実習の練習のために来る学生もいます。

◇プロの通訳者も学ぶ場

――活動に参加しているのは何人くらいで、どんな人たちですか。

横島さん関東中心の活動になっているので、コアとなって動いている運営スタッフは15人くらいです。勉強会のTOKYO MEDSは定員が60~100人ぐらい。最近は満席で、お断りすることも多い状況です。

参加者は多彩です。医学生は学年がばらばら。仕事に生かしたい医師もいるし、通訳として活躍している人が医療の知識を高めたくて参加している例もあります。年代や職種を超えて、同じテーブルを囲んでお話しします。

医療通訳の人は海外経験が豊富で、大学で英語を専攻していた人が多いので、学ぶことが多く、とても勉強になります。医学生が大学で習った医学知識を教え、社会人からは英語の表現の仕方とかを教えてもらうので、ギブアンドテイクのよい雰囲気です。

――TOKYO MEDSは具体的にはどういったことをするのですか。

石本さん押味先生の講義は基本英語なので、まず、講義を受ける前にプレセミナーがあります。1、2年生向けには、5年生の松根さんが分かりやすい医学的知識を日本語で教えます。英語に集中するためには医学的知識が必要なので。これには医療通訳の人も参加します。

石本あゆさん

――松根さんが先生って、すごいですね。

松根さん押味先生から事前に資料をいただくのですが、それが膨大なため、発熱一つ取っても、その中のどこにフォーカスを合わせるかは、その日次第なので、プレセミナーと合致しないこともあります。プレセミナーの内容が役に立つ日もあるし、そうでない日もある。自分の勉強にもなります。

◇ワークショップ形式で議論

――押味先生の講義はどのように進められますか。

石本さん講義とワークショップです。一つのテーブルを5、6人で囲み、押味先生が質問を英語で投げ掛けます。医療知識や英語の表現方法などを聞かれることが多いです。1、2分間グループで話し合って、全体でも話し合います。テーブルによっては、医療通訳さんがいて会話が盛り上がることもあれば、低学年の学生や英語が得意でない人が集まることもあります。

松根さん私が一番難しいと思ったのは、日本語でもよく分かっていない神経学的所見や診察時のやりとりです。発熱とか腹痛であれば、「何を問診で聞きますか」のような、絶対に外しちゃいけない質問、例えば、「他に症状はありますか」とか、英語で何と言うのかという質問を先生が投げかけられます。

石本さん前半はその日のテーマ、例えば、胸痛だったら、胸痛を起こす疾患をザーッと英語で説明され、ワークショップで見逃しちゃいけない症状を話し合います。後半は、押味先生が実際に患者になって、胸痛を訴えたときの症例を検討するというスタイルが多いと思います。

松根さん医学生は無料で受講できるので、学生のうちにぜひ来てほしいです。

TOKYO MEDSでの押味先生の講義

◇イベントにも積極参加

――TOKYO MEDS以外の活動もありますか。

石本さん不定期ですが、国内のボランティアに参加しています。今年8月には「アジア太平洋薬学生シンポジウム(APPS)」の総会が昭和大学の富士吉田キャンパスで行われました。

松根さん薬学生が中心のイベントで、アジアのさまざまな国の学生を招いてパーティーやワークショップを1週間にわたって行いました。実際に、体調が悪くなった学生と一緒に病院に行き、医師や看護師との通訳もしました。捻挫程度であれば、私たちが対応しました。

富士吉田は東京から遠いので、有志の学生が2人ずつ交代しながら泊まり込みで1週間参加しました。

横島さん夏に東京大学で「SOLA」というサマーカンファレンスを開催しました。2日間で合計200人ほどが来場し、国際医療について考えるイベントをやりました。

松根さんSOLAは次回、来年1月にやるのですが、「医師の既存の枠にとらわれないキャリア」と「いかに親しみやすく医療に触れてもらうか」ということを題材に、デジタルデザインを研究している石井洋介先生からお話を伺います。

過去には、スタンフォード大のマインドフルネスの先生や昭和大学の外科の先生をお呼びして、海外の実地臨床についてワークショップをやりました。日本医師会理事や五輪組織委員会の人など、英語にとどまらず、いろいろな方々にご講演をお願いしています。

SOLAカンファレンスでの発表の様子

横島さん今までは東京五輪に絞った活動はしてきていなかったので、そろそろ意識を高めていこうかと思っています。医学生に限らず、大学生で五輪のボランティアに参加したい学生が集まっている「おりがみ」という団体と提携し、学生の五輪ボランティアについて情報交換をしています。

石本さんパラリンピック卓球のチームドクターである大野洋平先生をお呼びして、パラリンピック開催で何が必要かなどを教えていただきました。障害者との関わり方、パラリンピックの基準(等級)の判定等、チームドクターの仕事内容を聞いたのは初めてだったのでとても興味深かったです。

横島さん五輪にとどまらず、今後、この団体の活動を国際医療にどのような形で生かしていけるのかを考えていきたいと思っています。

記事の内容、肩書などは取材当時のものです。