こちら診察室 膝の痛みと治療法の新たな選択肢

ヒアルロン酸注射はいつまで続けるべき?
~痛みが改善しなくなった場合~ 【第6回】

 ◇効果が見られなければ、手術を検討

 保存療法で痛みが十分に軽減されない場合、次の治療法として「人工関節置換術」が選択肢に挙がります。人工関節置換術は、膝関節を金属や樹脂でできた人工の関節に置き換える手術です。変形性膝関節症が進行し、末期の状態となった方に効果が期待される治療法の一つですが、手術には合併症のリスクも伴います。

 手術はすべての方に適応されるわけではなく、主に保存療法(薬、注射、リハビリなど)では十分な効果が得られず、日常生活に支障が出ている方が対象となります。手術後は3〜4週間の入院が必要で、退院後は継続的なリハビリで機能回復を目指します。

ひざ関節症クリニック作成

ひざ関節症クリニック作成

 ◇新たな選択肢「再生医療

 変形性膝関節症の治療として、注目されているのが再生医療をはじめとする先進的な治療法です。当院では、患者さん自身の血液を使った「PRP-FD注射」や、腹部などから採取した脂肪を利用した「培養幹細胞治療」を行っており、これらの治療を受けた多くの患者さんが、長期的な痛みの改善を実感しています。

 再生医療は、痛みの一時的な軽減だけを目指すのではなく、根本的な痛みの解決を目指す治療法として、特に変形性膝関節症の方に有効です。再生医療が今後、新たな選択肢として広く認知されていくことを期待しています。

 ◇まとめ

 ヒアルロン酸注射は、変形性膝関節症の初期〜中期の治療として広く用いられているスタンダードな方法です。比較的安全で手軽に受けられる治療法ですが、あくまで「対症療法」に過ぎません。痛みの軽減が感じられなくなった場合は、治療の方向性を見直すタイミングかもしれません。従来は次の選択肢として手術がありましたが、現在では再生医療など、手術に代わる治療が注目されています。

 「もう注射が効かないかも」「でも手術には踏み切れない」と悩んでいる方は、新しい治療法を試すことで、これまでとは違う一歩を踏み出せるかもしれません。大切なのはご自身の膝の状態に合った治療法を見つけていくことです。

尾辻正樹理事長

尾辻正樹理事長

 尾辻正樹(おつじ まさき) 医療法人社団活寿会理事長。05年鹿児島大学病院初期臨床研修、07年同大学病院整形外科入局、11年埼玉県内の整形外科にて勤務、18年東京ひざ関節症クリニック銀座院入職、18年横浜ひざ関節症クリニック院長就任、22年から現職。

 札幌ひざ関節症クリニックと仙台ひざ関節症クリニックの院長を兼任。日本整形外科学会認定専門医、再生医療学会認定医。

 [1] 日本整形外科学会変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会:変形性膝関節症の管理に関するOARSI勧告 日内会誌.2017 :106,75~83.


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