生野照子 医師 (いくのてるこ)

なにわ生野病院

大阪府大阪市浪速区大国1-10-3

  • 心療内科
  • 部長

心療内科 小児科 内科

専門

心身医学、小児科・摂食障害

生野照子

生野照子医師は、心療内科・小児科医。特に摂食障害に関し、当事者主役の診療を行いながら、患者や家族がもつ本来の力を強める治療を提唱してきた。摂食障害患者本人や家族が中心になって行うセルフヘルプグループ(自助グループ)の活動の中心的な存在となっている。臨床心理士などとのチーム医療に取り組むと同時に、大学在職中は教授として臨床心理士の育成にあたってきた。現在は外来診療の傍らストレス疾患治療研究所所長も兼任する。公的専門治療期間として摂食障害センター設立をめざす準備委員会でも積極的な活動を続けている。

診療内容

生野医師は医師として生きてきた時間の大半を、摂食障害のある人達と向き合って過ごしてきた。特にセルフヘルプグループ活動を支える第一人者として広く知られている。生野医師がセルフヘルプグループ活動にかかわるようになったきっかけは、意外にも病院の待合室にあったという。診察を待っている間に当事者の家族同士で話す輪ができるようになり、活発な情報交換が自然発生的に起こっていく…その様子から、同じ悩みを持つ家族であれば医師には聞きづらいことも有意義に話し合えると知り、家族のための会を作った。これは日本の病院としては初めての試みであったが、新聞や口コミで一気に広がり、あっという間に100人もの摂食障害で悩む人たちが集まったのだという。
「摂食障害には様々な問題が絡んでいるので統合的な治療が欠かせません。医師だけで治せるような問題ではないのです。障害のある本人の力と家族の力。いずれも必要です」(生野医師)
同院の特徴の一つは、ストレス疾患治療研究所を併設する点だ。摂食障害に関して身体的な検査や治療や投薬を病院で、そして心理療法や相談は併設のストレス疾患治療研究所で、と心身両面からの統合的なサポートが可能である。ストレス疾患治療研究所では各分野の専門家(医師・臨床心理士・精神保健福祉士・管理栄養士)がチームを組み、それぞれの知識と経験を生かして治療にあたっている。さらに同じ病気や問題を抱えた人同士が集まって活動を行う自助グループの紹介までも担っているという。
摂食障害のある人と家族のもつ悩みは多岐にわたるが、生野医師はその要因の一つを「家庭をゴミ箱としてきたのでは」と話す。「摂食障害のある人と家族は、良い病院を求めて奔走した挙句、出会った医師から “摂食障害は難治性です”と宣告され、“親の育て方に問題があるから病気になった”というような思いを抱くことが実に多いのです。もしも本人や家族に欠点があった場合、それに気づいて改善できれば快方に向かうでしょう。しかし、だからといって発症の原因が個人や家族にあったとは言い切れません。摂食障害の心理的治療は、極端にいえば家庭を「ゴミ箱」として原因を放り込んできたとも言えるのではないでしょうか。これは不登校の過程にも似ています」
こうした問題を解決するため、今後の自らの活動について生野医師は熱意を語る。「摂食障害であることが周りに知られるとまずいと思わせるのが今の社会の現実です。だから摂食障害を恥ずかしくない病気だと言えるような拠点を作りたいと思っています。人生これからという若い女性たちが命を落としているという事実は放っておけません。しかし世間ではこの問題の実態をよく知らない人が多いし、詳しく調べられている訳でもないんです」
2010年秋、こうした熱い思いと、摂食障害における治療の歴史や現状を踏まえ、生野医師は公的な摂食障害専門の治療機関「摂食障害センター」を立ち上げる活動をスタートさせた。設立に向けて、生野医師はその準備委員会の中心メンバーの一人として活動を続けている。日本は欧米に並んで摂食障害の多い国であるにかかわらず公的な専門治療機関が存在しないため、日本の摂食障害診療の実態と問題点について情報公開し、マスコミにも摂食障害の公的専門治療機関の必要性を訴えていくつもりだという。この活動はまだ始まって間もない。早期のセンター設立を願うばかりだ。

医師プロフィール

1969年 大阪市立大学医学部卒業、あべのクリニック心療内科を経て、
1989~2008年 神戸女学院大学人間科学部教授
2007~2012年3月 大阪府教育委員長
2008年 社会医療法人浪速生野病院・心身医療科およびストレス疾患治療研究所を開設、神戸女学院名誉教授も兼任する