渡部芳徳 医師 (わたなべよしのり)

市ヶ谷ひもろぎクリニック

東京都新宿区市谷田町2-31-3 ASUKARAビル2F

  • 内科、泌尿器科、心療内科、精神科
  • ひもろぎグループ理事長

内科 心療内科 精神科

専門

臨床精神薬理学(うつ病、双極性障害、統合失調症、社交不安障害、パニック障害、ADHD発達障害、てんかん等)、うつ症状を伴う男性更年期障害・LOH症候群、うつ病患者の復職支援(リワーク・デイケア)、がんの予防・心理社会的療法

渡部芳徳

多剤併用から脱却し、最低限の薬でうつ病を治療することを提唱してきた渡部芳徳医師。少ない薬と、患者の思いをしっかり傾聴することで、多くの人が回復へ向かうのに立ち会ってきた。休職した人の復職支援(リワーク)を2007年から開始し、同院のリワーク利用者は、累計700人にものぼる。目に見えない心の症状を科学的に可視化しコントロールするアプリ「アン-サポ」の開発も手がける。「サイモントン療法」に基づくがん患者の心のケアにも乗り出し、時代のニーズにマッチした診療をめざしている。

診療内容

渡部芳徳医師がこれまで取り組んできたことの1つは、多剤併用をやめ、薬を減らすことである。精神科で多剤併用が主流とされてきた要因の多くは、慣れからくるものではないか、と渡部医師は話す。「医学部で薬の機序を学んでも、その一つ一つの使い方までは詳しく習いません。入局後、先輩医師の処方を見よう見まねで覚えていきます。そのため、多剤併用に慣れた先輩医師と同じように、複数の種類の薬を処方するようになるのではないでしょうか。しかし、うつ病の薬を服用して、余計に悪化した人も見てきました。中には、抗うつ剤を飲み始めてから人が変わったようだと言われる人もいます。反対に、特に軽症の人は、受診して医師に話を聞いてもらって良くなることもあり、薬は多くなくていいのではないかと思うようになったのです」。

渡部医師は、薬を使うかどうか、そして薬を使う場合はどの薬が合うのかを慎重に見極めることをモットーとする。同時に、うつ病の診療において注意を払うのは、双極性障害との鑑別だ。この診断を間違えると、長いトンネルを抜けない治療になってしまうからだ。だが、双極性障害の患者は、躁状態の時は受診しないことが多く、この2つの見分けは難しい。現在の状況に加えて、発症前の様子についても丹念に問診し、患者の服装などの外見上の特徴も判断材料の一つにして診断していくという。「うつ病らしき患者を診療する際は、半分は双極性障害だと思って診ています。この2つは治療方法が異なるため、双極性障害を見逃さず、きちんと分けて考えなければなりません。しかし、精神科医でも双極性障害を見たことがない、つまり見逃している医師も存在するのは怖い話です」。

渡部医師にとって、症状の「見える化」も課題の1つだ。2011年の東日本大震災をきっかけに、心の症状をアプリ「アン-サポ」を独自に開発したことで知られている。「地震当時は都内で診療していましたが、すぐに大学時代を過ごした福島に戻りました。危機的な状況下では、人間は「何かしなければ」という使命感のスイッチが入るもので、ふとアプリを作ってみようと思ったのです」。

「アン-サポ」は、誰でも手軽にダウンロードできるアプリで、心の状態を自分で入力すればグラフ化された変化を閲覧できる、つまりセルフモニタリングできるツールだ。さらに、同じ薬を使っている全国のアプリユーザーの平均と自分の点数を比べることが可能だ。同院を受診する患者には使い方を網羅した書籍を渡し、自宅で自己管理するよう勧めているという。「グラフが上がったり下がったりすると、明らかな双極性障害だとわかることもあります。その人の状態と治療がきちんと合致すれば治る、だから自己診断ツールを作れば患者さんにとって利便性が増すはずです。躁状態の時は気分が高揚して入力しないことも多いのですが、無理に入力しなくてもいいので、できる範囲で入れて頂きます」。アプリのユーザー数は現在20000人を超え、今後さらに増えると推測される。

渡部医師は、心の病気から休職した人に対するリワークデイケア(復職支援)にも精力的にかかわり、9年間で700人もの復職をサポートしてきた。リワークでは、なぜうつ病になったかを本人が振り返ることから始め、認知行動療法、食事、運動、さらに復職目的だけにオフィスワークの時間も設置。新聞を読んでサマリーを作ったり、パソコンで作業したりと、さまざまなプログラムが用意されている。食生活指導の一環として、渡部医師は料理にも着目し、野菜ジュース作りをはじめとする調理の時間も取り入れる。リワークデイケアに要する期間は4~5か月から長くて半年であり、最後の1カ月は週5日通院するという。「リワークデイケアは非常に効果的で、復職3年後の就労継続は約8割を超えます。当院でリワークプログラムを受ける人は、うつ病と双極性障害の人が半々程度です。ただし、リハビリテーションの意味合いで行うため、うつ状態がひどい人には行いません」。

年々増加の一途をたどるがん患者に対しても、心のケアを行いたい、と渡部医師は抱負を語る。「実は私自身も肺がんでした。克服できた体験に基づいて、カウンセリングを始める予定です」。渡部医師は、アメリカのカール・サイモントン博士が開発した心理療法「サイモントン療法」のトレーニングを修了。同療法ではがんを受け入れることからスタートし、イメージ療法などのプログラムを経て、死の恐怖を取り除きながら不安をコントロールする効果があるという。渡部医師は同療法に独自の要素も加え、免疫力を高めるサポートを行っていく予定だ。

医師プロフィール

1989年 山梨医科大学(現 山梨大学医学部) 卒業
1989年 福島県立医科大学付属病院神経精神科入局
その後、米国デューク大学医学部神経科学研究センターへ留学、てんかんモデルのキンドリングを研究
帰国後、博士号を取得し、精神科医療を専門に診療・研究を行う
東邦大学薬学部客員教授も兼任する

「うつ病」を専門とする医師