医学生こーたのひよっ子クリニック

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第2回 AI社会

さまざまな業界に人工知能(AI)が搭載され始め、AI社会へ突入しようとしているが、医療業界も例外ではない。レントゲン写真やCT画像から異常を見つけてくれるAIや、病状を説明すると診断してくれるAIなど、世界中で急速に開発が進んでいる。このような背景の中で医学生や一部の先生の会話では「内科系はAIに仕事を奪われるよ」などと、総合内科医志望の私にとってはムッとするような言葉が飛び交っている。全国の内科医、内科医志望の医学生を代表して私がこれについて異議を唱えたい。

そもそも患者と接している限りほとんどの医師は残り続けるというのが私の意見である。例えばAIが何かしらのエラーを起こし、医療事故が起きてしまったとき、その責任は誰がとるのか。誰がその現場の収拾をつけて患者を助けるのか。それは紛れもなく医師である。そして何より重要な事は、人間の不安を和らげられるのは人間であるという事だ。神経内科の外来実習中、「先生の顔を見ると症状が和らぐんです」と患者が先生に対して嬉しそうに言っていた。

その先生は「もう1年やってもらおうか」とお決まりの名セリフ(?)で留年をちらつかせてくる厳しい人なのだが、私たち生徒には見せないような優しい顔をして丁寧な診察をし、患者と絶対的な信頼関係を結んでいた。診断するために必要な情報が、患者の口から淀みなく出てくる様子を見て、これは決してAIにはできない業であり、医師という職種は決してなくならないということを確信した。

もちろん技術者が苦労して開発しているAIを補助的に使うことは医療界にプラスとなる。となると今後医師に求められるものは、絶対的な知識量ではなく、信頼関係を結び患者と心の距離を縮めるという、AIには到底習得し得ないスキルではないだろうか。このスキルを手に入れるために、医学生である私が病院実習中にすべきことは、とにかく長い時間患者さんと接することだと思う。尊敬する先輩が「実習において最も大事なことは回診だ」と言っていた理由がわかった気がした。

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