劇症肝炎〔げきしょうかんえん〕

 急激に広範な肝細胞の破壊が生じ、意識障害などを伴って、急性の肝不全状態となる疾患です。ふつうの急性肝炎と思って治療していくうちに、肝障害が進行し劇症化することも多く、わが国の場合、原因は約8割がウイルス性です。劇症化するメカニズムは不明であり、一度劇症化すると死亡率約80%と予後(病気の経過についての見通し)が不良な疾患です。
 劇症肝炎とは肝炎のうち、からだがだるい、発熱、吐き気、黄疸(おうだん)などといった肝機能の悪化に伴う症状がみられたあと、8週以内に肝性昏睡(こんすい)Ⅱ度以上の脳症をきたし、プロトロンビン時間40%以下を示すものと定義されています。
 肝性昏睡Ⅱ度とは日時、場所、人物に対する認識がむずかしくなり、計算したり字などを書いたりすることができなくなる程度の症状を指します。アンモニア値が高いため、手がふるえる、いわゆる羽ばたき振戦がみられることがあります。
 プロトロンビン時間とは肝機能の指標の一つで、正常は70%以上です。
 劇症肝炎には発病後10日以内に脳症が発現する急性型と、それ以後に発現する亜急性型があります。

[原因]
 原因はウイルス性のものと薬物性のものとに大きく分かれますが、原因の特定は必ずしも容易ではなく、原因不明のものも多いようです。そのほか、キノコ毒であるアマニタトキシンも原因となります。

[治療]
 劇症肝炎となった場合には、原因がなにかにかかわらず、肝臓のはたらきを補うための人工肝補助療法をおこなって血液中の有害物質を除去し、肝臓でつくられるべき物質を補給するための治療法が必要となります。
 患者の血液から血球以外の成分(血漿〈けっしょう〉)を取り除き、これを健康な人の血漿と交換する血漿交換法、腎臓がわるい患者でおこなわれている血液透析(とうせき)を応用した血液濾過(ろか)透析法、肝再生を促進するグルカゴン・インスリン療法、炎症を抑制する副腎皮質ステロイド薬の投与などが併用されます。また、全身の臓器障害に対して、適切な治療をおこなう必要があります。
 これらの治療により肝臓の機能が低下している期間を乗り切れれば、正常肝細胞が再生してくるので救命することが可能となります。
 しかし、劇症肝炎ではこのような治療によっても肝臓の機能が回復しないことがあり、その際は肝移植をおこなうことになります。脳死者からの肝臓を移植する場合と、近親者の肝臓の一部分を移植する場合(生体部分肝移植)がありますが、わが国では生体部分肝移植がひろくおこなわれ、良好な成績が得られています。近年では劇症肝炎に対する生体肝移植でも保険が適用されています。
医師を探す