早期がんと進行がん

 「早期がん」は時間的な要素を含んだことばです。がんが発生して臨床的にそのがんが診断されるまでにはある程度の時間が経過していると考えられますが、どれくらいの時間が経過したものか実際のところは不明です。ある時点のがんの大きさがわかっており、そのがんをしばらく経過観察したときの大きさがわかれば、2つの時点でのそれぞれのがんの大きさから、そのがんがいつごろ発生したかを推定することはある程度可能です。
 しかし、実際にはがんが発見されれば治療が開始されますので、この推定はむずかしいのが現状です。このような背景から、時間の尺度をかたちの尺度に置き換えて早期がんの定義がなされています。かたちの尺度とは具体的には、がんのひろがりがどの程度のものかを顕微鏡で観察した所見のことをいいます。
 早期がんということばには治療によって完治できるがんという概念も含まれます。したがって、臓器によって早期がんの定義が異なります。たとえば消化管のがんでは通常、がんが消化管の壁にどの程度の深さまでひろがっているのかで、早期がんあるいは進行がんと診断します。
 胃がんや大腸がんでは、がんのひろがりが粘膜下層までの場合、早期がんとされます。これは、粘膜や粘膜下層のような浅いところでは血管やリンパ管が比較的少ないために、がんの転移が起こりにくいと考えられているためです。

 図は、消化管の壁の断面を示したものです。粘膜の上の部分が内腔と呼ばれるところで、食物などが通ります。粘膜から漿膜までの厚さは薄く、数ミリ程度、部位によっては1~2mmの厚さしかありません。
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