がんの診断法

 いろいろな方法を組み合わせてがんの診断をおこないます。
 まず、どのような症状がいつごろから出現してきたかという現病歴、からだを診察して得られる身体的所見が診断の手はじめです。次に血液検査(腫瘍マーカー)、X線検査などがおこなわれ、病巣が存在する臓器によって内視鏡検査、超音波(エコー)検査、超音波内視鏡検査、CT・MRI・PET検査、シンチグラフィ検査、細胞診、生検(組織診)などがおこなわれます検査の知識
 これらの検査のなかで、がんと確定診断をくだすことのできる検査が組織診です。ほかの検査はがんの疑い(疑診)という診断をつけることはできますが、確定診断には至りません。組織診の結果はグループI、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Vの5段階であらわされます。
 グループIは、正常組織および異型を示さない良性病変、グループⅡは、異型を示すが良性と判定される病変、グループⅢは、良性と悪性の境界病変、グループⅣは、がんが強く疑われる病変、そしてグループVががんです。したがって、グループVの病理報告でがんの確定診断に至ります。
 いっぽう、細胞診の結果はクラスI~Vの5段階で表示されます。クラスIは異型細胞がない、クラスⅡは異型細胞は存在するが悪性ではない、クラスⅢは悪性細胞が疑われるが断定できない、クラスⅣは悪性細胞の可能性が強い、クラスVが悪性細胞である、というものです。
 最近では細胞診の精度も高くなり、細胞診でクラスVが出れば、まずがんと考えられます。しかし、擬陽性(実際はクラスⅡあるいはクラスⅣであっても、クラスⅤと判断されてしまうことがある)の場合もあり、やはり組織診が確実です。
 細胞診、組織診、病期のいずれもがローマ数字で分類表示されていますが、医師の説明を聞くときにその意味を把握しておくことが重要です。
 細胞診あるいは組織診でVといわれれば、病変が良性ではなくがんであるという意味です。次にそのがんがどの程度進行しているかを示すのが病期(ステージ)です。ときどきまちがいを起こす例として、ある病院で「あなたの病変はⅣです」といわれたので、かなり進行したがんと思い込んでしまう場合です。
 このⅣがグループⅣなのかステージⅣなのかで意味が大きく異なります。グループⅣの意味であれば、その病変はまだがんの確定診断に至っていないことを示します。

■新たな診断法―遺伝子診断
 がんが遺伝子の異常による病気であるという概念にもとづいて、がんの新しい診断法として、現在遺伝子診断が脚光を浴びています。
 がんの遺伝子診断は、がんに特徴的な遺伝子の異常を指標として、がんの発症前診断や微小転移の診断などに応用されています。がんに関連した遺伝子が、現在、500個程度見つかっています。これらのがん関連遺伝子のいくつかを調べて、それに異常があるか否かを検査することによって、将来そのがんになりやすいかどうかを評価します。このリスク評価は相対的なものですので、検査を受けるかどうかも含めて、慎重に決定する必要があります。がんの多くは遺伝するものではなく、人それぞれによってがんになるリスクは異なります。最近の遺伝子診断は、親から子へ遺伝しないがんの診断、すなわちがんのリスク評価をおこなっているものです。いっぽう、親から子へ遺伝するがんもあります。たとえば、大腸腺腫症という遺伝性の病気では、一定の期間がたつと大腸がんになることがわかっています。これはAPCという遺伝子の異常から起こる病気です。親が大腸腺腫症であった場合、その子のAPC遺伝子異常の有無を調べることにより、発症前の診断ができます。このような遺伝子診断の分野はまだ研究途上の段階です。
 がんの遺伝子診断のもう一つの側面として、倫理的あるいは社会的な問題があります。発症前にがんの診断がなされることによる利益と不利益、診断がなされた場合の精神的なサポートなどがそれにあたります。
 日本では、まだジェネティック・カウンセラー(遺伝子相談)のシステムが確立していないため、まずこの社会的システムの構築が必要です。
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