開発途上のがん治療

■遺伝子治療
 がんに対する遺伝子治療にはさまざまな方法がありますが、現在はまだ臨床試験の段階です。がん抑制遺伝子の異常によるがんであることが確認された場合、正常ながん抑制遺伝子をがんに導入することでがんの増殖を抑えることができます。よく用いられるがん抑制遺伝子としてはp53遺伝子が代表的です。
 がん細胞を障害するリンパ球にキラー細胞があり、このキラー細胞を誘導する因子がインターロイキン2あるいはインターロイキン12です。このような誘導因子を産生する遺伝子をリンパ球に導入する方法もあります。
 また、抗がん薬が効果を示さないがんにアポトーシス(自己消滅型の細胞死)を誘導するような遺伝子を導入し、抗がん薬の効果を高めるという方法もあります。なお、細胞の死にかたには生理的な細胞死(アポトーシス)と病的な細胞死(ネクローシス)の2種類があります。アポトーシスは細胞膜に包まれたかたちで他の細胞に捕食されてしまうため、周囲組織に炎症などの影響を及ぼしません。いっぽう、ネクローシスでは細胞膜の崩壊を伴い、周囲組織に影響を及ぼします。

■COX-2阻害薬
 COXとはシクロオキシゲナーゼという酵素の略称で、COX-1とCOX-2の2種類に分けられます。シクロオキシゲナーゼは脂肪酸がプロスタグランジンに代謝される過程ではたらく酵素です。COX-1は正常な細胞内に存在する酵素です。いっぽう、COX-2は腫瘍細胞に発現してくる酵素と考えられています。
 プロスタグランジンの産生を抑える薬としてアスピリンが有名です。アスピリンが大腸がんならびに大腸ポリープの発生を抑えるという報告がなされたため、プロスタグランジン産生阻害薬ががんの予防薬として注目を浴びるようになりました。
 脂肪酸がプロスタグランジンに代謝されることは、正常な細胞でも必要な過程で、がんに特異的な代謝過程だけを抑える薬剤としてCOX-2阻害薬が開発されました。現在、小規模な臨床試験で、がん予防には効果があるとの報告がなされている状況です。

■新たな免疫療法
 がん細胞が体内に発生した場合、まず抗原提示細胞と呼ばれる細胞につかまり、取り込まれます。これを貪食(どんしょく)といいます。貪食されたがん細胞は抗原提示細胞の中でたんぱく質の断片(ペプチド)になるまで分解され、抗原提示細胞の細胞表面に提示され(示され)ます。この提示されたペプチドを免疫系(おもにリンパ球)が認識し、これに対する抗体や、このペプチドをもつ細胞だけを攻撃するようなTリンパ球が大量につくられます。こうして、がん細胞だけを特異的に攻撃するような免疫応答が誘導されると考えられています。
 抗原提示細胞にはいくつかの種類がありますが、樹状細胞はそのなかでももっとも強い抗原提示能力をもった細胞とされています。
 樹状細胞は、造血幹細胞から分化し皮膚や腸管壁などに分布する、木の枝のような細長い突起をもった細胞です。がん細胞を貪食した樹状細胞はがん細胞由来のペプチドを細胞表面に提示し、リンパ節などのリンパ組織に移動します。移動した樹状細胞がほかのリンパ球に抗原を提示することによって、がん細胞に対する免疫応答を誘導します。つまり樹状細胞は、免疫系に攻撃対象を指示する「司令塔」の役割を果たしているといえます。
 このようにがんの多くは、その発生初期の段階で体内に備わっている免疫系によって排除されてしまい、この免疫系の監視をうまくのがれたがん細胞だけががんとして発育してしまうと考えられています。
 そこでいったんは免疫系からのがれて発育したがんを、免疫系を活性化することで治療しようという試みがおこなわれています。さまざまな種類の免疫細胞を用いたがん治療の試みがなされています。
医師を探す

他の病気について調べる