貧血 家庭の医学

解説
 貧血はさまざまな病気の症状や低栄養としてよくみられます。症状などから自己判断せずにまず医師の診断を受けましょう。そして、貧血の原因となる病気がある場合はその病気を治します。
 ここでは、診断の結果「食事に気をつける程度」といわれた場合の貧血、特に鉄分の不足による貧血について解説します。

■きちんと食べる
 貧血のある人が必ずしもやせているとは限りません。肥満の人にもみられる場合もあります。いずれにしても、「きちんと食べていない」場合に多くみられます。食事はあまりとらずに、菓子やスナック菓子を、1日中ダラダラと食べる、食事といえば菓子パン、カップラーメン、コンビニエンスストアのおにぎりなどのように、偏ったものばかりを食べるという食べかたです。
 最近の若い女性には、やせている人が多くみられます。これは「国民健康・栄養調査」の結果にもはっきりあらわれています。やせている女性が妊娠・出産した場合に本人の健康問題だけでなく、生まれてくる子どもが、生活習慣病を発症するリスクが高い体質となり、その体質は、次世代にも受け継がれるとされています(この現象をDOHaD〈developmental origins of health and disease〉といいます)。生命の継承という点からも、女性のやせすぎの解消は、重要な課題です。
 貧血のある人、やせぎみの人は、食べかたの基本(生活習慣病の予防と食事)を、ぜひお読みください。低エネルギー食を継続するとビタミンやミネラルの不足を招きやすくなります。動かないと筋肉量が低下し、免疫(めんえき)力も低下します。「からだをよく動かしてきちんと食べる」、という「活発な代謝」の生活スタイルが大切です。また、たんぱく質をとっても、必要なエネルギーをとっていないとたんぱく質がエネルギー源として使われてしまい、本来のたんぱく質としての役割を果たさなくなります。さらに、実際に「鉄欠乏性貧血」と診断された場合には、食事療法だけの治療では治癒がむずかしいことがあります。医師の指導のもとで薬物療法をおこないますが、この場合でも、「きちんと食べる」という基本は守りましょう。

■鉄(Fe)の多い食品
 鉄は血液成分の赤血球の成分です。鉄が不足すると赤血球をつくることができなくなり、貧血になります。なお、鉄は出血などを除くと排泄(はいせつ)が少ないミネラルです。女性に貧血が多いのは、月経で定期的に血液が失われるためで、閉経後の女性に貧血が減るのはこのためです。サプリメントなどで、むやみに鉄をとると、鉄の過剰症のリスクがあります。食事から鉄がとれない場合は、鉄を強化した食品を、取り入れるとよいでしょう。しかし、何種類もの強化食品を重複してとるとやはり過剰となります。強化食品には、鉄の含有量が示されていますので、その数値を参考に、上限値を超えないようにします。

●鉄を多く含む食品
食品名100g中のFe含有量
(mg)
目安量
(g)
Fe量
(mg)
魚介類
どじょう5.61食分(30)1.7
かつお・なまり節5.01食分(50)2.5
きはだまぐろ(切り身)2.0(70)1.4
かつお(春獲り)1.91切れ(70)1.3
まいわし2.11尾(70)1.5
からふとししゃも・生干し1.42尾(30)0.4
さんま1.4中1尾(100)1.4
ぶり・成魚(切り身)1.31切れ(80)1.0
さば・まさば1.21切れ(80)1.0
かつお・角煮6.01食分(40)2.4
煮干し18.04本(10)1.8
あさり(缶詰)-水煮30.0(20)6.0
しじみ8.3(20)1.7
あかがい5.0(30)1.5
あさり3.810個(30)1.1
はまぐり2.1(30)0.6
かき(養殖)2.13個(50)1.1
肉類
豚・肝臓13.0(40)5.2
若鶏・肝臓9.0(40)3.6
牛・肝臓4.0(40)1.6
輸入牛・ヒレ・赤肉2.8(60)1.7
輸入牛・もも・皮下脂肪なし2.5(60)1.5
豚・もも・皮下脂肪なし0.7(60)0.4
豚・ヒレ・赤肉0.9(60)0.5
レバーペースト(豚)7.7(15)1.2
鶏卵・全卵1.51個(50)0.8
豆類
大豆・国産・黄大豆-乾6.8大さじ2(20)1.4
凍り豆腐-乾7.51枚(20)1.5
糸引き納豆3.31枚(20)0.7
えだまめ2.7(50)1.4
生揚げ2.61/2枚(80)2.1
豆乳1.2(200)2.4
木綿豆腐1.51/3丁(100)1.5
そらまめ・未熟豆-生2.3(50)1.2
野菜類
ふだんそう3.61食分(80)2.9
かいわれ大根・芽生え0.51食分(50)0.3
葉大根1.41食分(30)0.4
なばな・洋種・茎葉0.91食分(50)0.5
なばな・和種・花らい・茎2.91食分(50)1.5
こまつな2.81食分(80)2.2
サラダな2.41食分(30)0.7
からしな2.21食分(80)1.8
ほうれんそう2.01食分(80)1.6
しゅんぎく1.71食分(80)1.4
きのこ類
きくらげ-乾35.2(5)1.8
海藻類
ほしひじき(ステンレス釜、乾を水戻し後)-ゆで0.3大さじ2(5)0.0
刻み昆布8.6(5)0.4
(日本食品標準成分表2020年版〈八訂〉をもとに作成)


(執筆・監修:自治医科大学附属病院臨床栄養部 栄養管理室長 茂木さつき)