川崎市の老人ホームで入所者3人が転落死した事件で、殺人罪に問われた元職員今井隼人被告(25)の裁判員裁判が23日から横浜地裁で始まる。同被告の関与を裏付ける直接証拠は乏しく、弁護側は無罪を主張するとみられる。検察側は状況証拠を積み上げて立証する方針だ。
 起訴状などによると、今井被告は2014年11月3日深夜から4日未明にかけ、当時勤務していた川崎市幸区の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で、入所者の男性=当時(87)=を4階居室のベランダから投げ落として殺害。同年12月9日と同31日には、同様の方法で当時86歳と96歳の女性2人を殺害したとされる。
 3人が転落したのは深夜から未明にかけてで、表通りから死角になる老人ホーム裏庭の同じ場所で見つかった。男性と86歳女性は4階の同じ部屋から転落、96歳女性は真上の6階の部屋から転落したとみられている。3人のうち2人は巡回中の今井被告が第一発見者だった。
 夜勤の巡回は原則1人で行っていたため目撃者はおらず、防犯カメラの映像もないため、事件と今井被告を結び付ける直接的な証拠は乏しい。検察側は、転落があった日全てで当直勤務だった職員が同被告一人であることなど状況証拠を積み重ね、三つの事件を起こせるのは同被告だけだとして有罪を立証する。弁護側は、事故の可能性が否定できないと主張するもようだ。
 今井被告は当初、男性殺害を認め「仕事のストレスがあった」などと話した。男性について「手がかかる人だった」という趣旨の話をし、女性2人の殺害も認めたとされるが、その後黙秘に転じていた。公判では自白の信用性も争点になるとみられ、検察側は取り調べの録音・録画映像を証拠として請求している。
 今井被告は起訴後に精神鑑定を受けており、弁護側は精神疾患があったとして、刑事責任能力も争う見込みだ。判決は3月に言い渡される予定。 (C)時事通信社