ハーボニーの偽造品が持ち込まれた「現金問屋」と呼ばれる零細卸売業者は古くから存在し、薬局などから余った医薬品を現金で買い取り、必要とする医療機関などに転売してきた。薬の有効活用に貢献する一方、「秘密厳守」の商習慣から過去にも偽造品流通の舞台となった。
 「現金卸」「高価買取」。東京都千代田区のJR神田駅近くに薬専門の現金問屋が集まる一角がある。看板を掲げた雑居ビルが点在し、段ボール箱を積んだ車が行き交う。ハーボニーの偽造品はこの問屋街から拡散した。
 都の薬事監視担当者らによると、医薬品は通常、メーカーから大手卸売業者を通じて医療機関や薬局に納品されるが、一部は現金問屋を経由し流通。薬局などは不要な薬を処分し、必要なものを安く調達してきた。医療機関は販売許可がなく売却できないものの、関係者がひそかに持ち込むこともあったという。
 こうした流通は全体の3%にも満たないが、通常ルートでの仕入れが困難な小規模薬局などに重宝されてきた。在庫を抱える医療機関や薬局にとっても、使用期限が切れれば薬は廃棄するしかなく、現金問屋は一部に問題のある取引があっても、業界内では「必要悪」との見方が強かったという。
 ある業者は「信頼や資金力がなく大手業者と取引できない薬局もあり、大手とは持ちつ持たれつ」と内情を明かす。都の担当者も「余剰在庫はどこも課題で、現金問屋をただなくせばいいわけではない」と指摘する。
 一方、現金問屋には過去にも偽造薬が持ち込まれ問題となった。抗がん剤など高額な薬が狙われ、1988年には認知症治療薬「ホパテ」の偽造品が出回り、ブローカーの男らが逮捕された。
 ハーボニーの偽造品流通で、神田の現金問屋は廃業が相次いでいるという。別の業者は「持ち込みが減り、買う方も敬遠する。売り上げは半分に落ちた」とこぼした。 (C)時事通信社