【ジャカルタ時事】インドネシアで密造酒による中毒死が相次ぎ、犠牲者は過去1カ月間で120人を超えた。大半は低所得者で、危険を承知で飲んでいるという。専門家は「酒を入手しにくくした規制強化が一因」と分析。インターネット交流サイト(SNS)の影響も指摘する。
 中毒死の報告は4月初旬から西ジャワ州の都市部と郊外で相次ぎ、計112人に上った。大半がイスラム教徒で低所得層だった。亡くなった男性(28)の父親は時事通信の取材に「息子を思い出すのもつらい」と語り、別の男性の母親は「悲し過ぎて話せない」と涙を流した。
 インドネシアは国民の9割近くがイスラム教徒だが、戒律は比較的緩やかで、スーパーやレストランでは酒を売っている。イスラム教が広まる前から酒が存在した歴史もあり、飲酒をたしなむイスラム教徒は少なくないという。
 しかし、政府は2013年に税金を引き上げ、15年からはコンビニなどでの販売を禁じた。国民の半数強が1日2万ルピア(約156円)以下で生活するのに対し、自国製の比較的安価なビールでも1缶は約2万ルピアする。
 「規制すべきは違法酒で、合法酒は価格を下げるべきだ」。NPOインドネシア政策研究センターのスギナント・タンドラ氏は、誤った規制が事件の背景にあると指摘する。同氏が1、2月に調査したところ、密造酒を飲んだことがある人はアルコール消費者の42%に及び、8割以上が違法性と有害性を認識していた。77%が30歳以下で、若者への教育も重要だと説いた。
 インドネシア大のデイシー・インディラ・ヤスミン教授(社会学)は、犠牲者にSNSを多用する若者が多いことに着目。「所得が低く娯楽が限られる彼らは、密造酒で酔うことを格好良いと考えて投稿する。SNS上の人生を飾り、日々のストレスを隠すような環境に、格差社会が追いやっている」と分析した。
 警察は、イスラム教の断食月が始まる5月中旬までの密造酒撲滅を目標に掲げ、4月18日には「黒幕」1人を逮捕。ボトル3万本を重機で破壊する様子も公開した。だが、一週間もたたずに、東ジャワ州で新たに15人が密造酒で死亡した。 (C)時事通信社