若者向けのイメージが強いシェアハウス。高齢化が進む中、福島県伊達市は2015年から高齢者用のシェアハウスを運営している。中山間地域で1人暮らしをしていた高齢者を市街地に呼んで孤立を防ぎ、家族のように助け合う形を目指している。
 「近くで買い物ができて銀行や医療機関もある。おかずの交換もできる」。伊達市の住宅地にあるシェアハウス。広さ30畳の共用スペースで、鈴木伊都美さん(70)が笑った。夫や義父母が亡くなり、中心部から離れた一軒家を維持するのが難しくなったとき、高齢者用のシェアハウスを知った。「自分のために用意されたと思った」と振り返る。
 シェアハウスは平屋建てで、1DKと2DKの個室が各3部屋。他に共用のリビングとキッチンがある。一般的なシェアハウスと異なり、各部屋にもトイレや浴室、キッチンを備える。入居者は60歳以上で、家賃は1DKが月1万2600円、2DKが1万6500円。市によると、自治体が運営する高齢者用シェアハウスは珍しいという。
 高橋セイ子さん(72)は夫と昨年4月に入居した。市街地に住んでいたが高齢になり、長野県松本市の息子の元に引っ越しを考えていたとき、シェアハウスの入居者に誘われた。「親戚みたいな付き合いができて楽しい。老後を過ごすには最高の場所」と喜ぶ。
 入居者には好評だが、課題もある。市は高齢者が「疑似家族」として支え合う暮らしを目指すが、今はそこまで至っていない。佐藤クニ子さん(75)は「なかなか時間が合わず、みんなで料理を作ったことはまだない」と話す。食事はそれぞれ、自分の部屋で取ることが多いという。
 ただ、入居者同士の交流は進んでいる。佐藤さんと高橋さんは4月下旬、平昌五輪フィギュアスケート男子で連覇した羽生結弦選手のパレードを見に仙台市まで出掛けた。
 伊達市の高齢化率は34.0%。全国的に見ても高く、市は老後の新たな住まいの形としてシェアハウスに期待している。 (C)時事通信社