西日本豪雨で、岡山県倉敷市真備町地区が大規模な浸水被害を受けてから1カ月がたった。地区の各医療機関は懸命の復旧作業を続け、一部はプレハブなどで診療を再開。避難所での診療は7月末で終了した。だが、病院などのカルテや機器は水に漬かり、被災前の医療にはほど遠い。地元の医師は「提供できている水準は、まだまだ低い」と話す。
 真備町地区にあった12病院・診療所は、1カ所を除いて全て浸水被害に遭った。再開のめどが立たない医療機関も多い。
 車を失った住民も多く、県備中保健所の毛利好孝所長(55)は「地元の医療機関にアクセスしづらい状況になっている」と指摘する。避難所と医療機関を巡回する無料バスもあるが、利用者は伸びていない。診療再開の情報が十分届いていないという。
 再開した医療機関の機能も限定的だ。プレハブで診療を始めた真備町有井のミナモト医院の源寛二医師(51)は「今できるのは、けがの治療や点滴、視触診や処方箋を出すくらい」と語る。レントゲンが撮れないため、骨折の診断もできない。
 同町川辺の平本胃腸科外科クリニックでは、約1万4000件のカルテが水に漬かった。平本孔彦院長(62)は「CT(コンピューター断層撮影装置)や買いそろえたメスもやられた。ダメージが大き過ぎる」。復旧には約2億円が必要といい、「元に戻すのにどれくらいの期間がかかるのか読めない」と頭を抱える。
 それでも、地元で顔なじみの医師に診察してもらいたいという高齢者は多い。ミナモト医院に約40年通う同町市場の女性(79)は「ずっと昔から来ているし、やっぱり安心する」と話す。源医師は「よく知った人と診察中にする雑談が、心のケアにもなる。時間はかかるかもしれないが、できることを少しずつやっていきたい」と前を向いた。 (C)時事通信社