主に子供が発症し、筋肉にまひを引き起こす感染症ポリオの根絶を目指すパキスタンで、スマートフォンの対話アプリを通じて「偽情報」が広がり、保護者がワクチンの予防接種を拒む深刻な問題が起きている。何者かが「接種を受けて死亡した子供」と記して無関係な遺体の画像を広めたケースもあった。当局が、こうしたデマの火消しに追われている。
 ポリオは世界的に根絶が進む一方、パキスタンでは昨年、3件の発症例が確認された。当局は世界保健機関(WHO)や国連児童基金(ユニセフ)と連携し、発症を抑えるのに有効とされる予防接種の実施を進めている。
 しかし、接種を妨害するいたずらが絶えない。パキスタン国立緊急対策センターで衛生対策の指揮を執るラナ・ムハンマド・サフダル氏は「パキスタンでも人気の対話アプリ『ワッツアップ』を通じ今年3月、予防接種と全く関係ない理由で亡くなった子供3人の写真が『接種のせいで死んだ』と虚偽の説明を添えて流布された」と語った。こうした風評が広まるのは速い。接種の安全性を疑う保護者の説得に苦労している。
 パキスタン国民の多数派イスラム教徒の間では「接種を受けると将来、子供が生まれなくなる。欧米で少子化が進んでいることがその証拠だ。接種はイスラム教徒の子供を減らし、根絶やしにしようとする外国の陰謀だ」と扇動するデマも広がっている。国外の著名イスラム神学者に「接種は安全だ」と宣言してもらうよう当局が依頼する事態になった。
 パキスタンを含む南アジアでは情報化が急激に進んできた。ワッツアップなど対話アプリの利用者も増えている。
 しかし、世界的な問題になっているように、南アジアでもあふれる情報に対し、受け止める側の適切に理解する力が追いついているとは言い難く、デマに弱い。パキスタンの隣国インドでは、死者1000人を超えた今年の水害被害を前に、混乱を助長して楽しむ愉快犯の偽情報があふれた。偽の「誘拐犯」情報がでっち上げられ、疑いをかけられた無実の人がリンチに遭って死亡する事件も続発している。利用法をめぐる真剣な議論は始まったばかりだ。 (C)時事通信社