京都大が人工多能性幹細胞(iPS細胞)をパーキンソン病の患者に移植する臨床試験(治験)を始めた。島根県雲南市の元中学校教諭、錦織幸弘さん(54)は「元の体に戻りたい。一日も早く治療法を確立してほしい」と希望を託す。
 右手に震えを感じていた2006年、医師からパーキンソン病と告げられた。「目の前が真っ暗になる思いで、自分の人生は終わった」とショックを受けた。他の医師にも意見を求めたが、診断は覆らなかった。
 やがて足が前に出ず、歩けなくなるなど病状が進行。14年3月、脳に電極を埋め込む手術を決断し、電気の刺激で症状を抑えることに成功した。15年4月、いったん指導教員として職場復帰し、翌年度に教壇に立つことを目指した。
 だが、教室で机の間を歩き回ることができず、16年3月に52歳で退職した。現在は1日5回薬を服用。昼間は車を運転して外出するが、薬の効きが悪くなる朝夕は電動車いすで生活している。
 錦織さんが受けた手術は徐々に効果が薄れ、3~7年ごとに電池の交換手術が必要になるという。iPS治療は全ての患者に有効とは限らず、実用化も10年先とみられている。
 それでも錦織さんは毎日、自宅に取り付けた鉄棒で懸垂などのトレーニングに励む。iPS治療の実用化を見据え、「体の準備ができているようにしたい。普通の人と同じように転ばずに歩きたい」と話す。 (C)時事通信社