武田薬品工業によるアイルランド製薬大手シャイアーの買収が5日の臨時株主総会で承認された。買収に向けた最大のハードルを乗り越え、武田は世界大手の仲間入りを果たす。社内からは「リスクは覚悟の上」との声も聞こえるが、7兆円に及ぶ巨額買収への不安は拭えず、買収を主導したクリストフ・ウェバー社長の手腕が問われるのはこれからだ。
 シャイアー買収後の武田の売上高は、1兆7705億円(2018年3月期)から3兆5000億円規模に倍増。武田は世界の新薬開発をリードする米国で存在感を高め、年間4000億円の研究開発投資が可能になるという。ウェバー社長は買収を機に「研究開発主導型のグローバル企業」への脱皮を目指すと強調してきた。
 しかし、日本企業による海外企業買収の失敗例は枚挙にいとまがない。武田はシャイアーの株式買い取りに当たり、同社の価値を高く評価。通常3割前後とされる株価に対する上乗せ幅を6割超に設定した。仮に評価の前提が崩れれば巨額の減損処理を迫られる可能性もある。
 不安視されているのが血友病治療薬だ。シャイアーが強い分野で、同社の高い収益を支えているが、昨年以降、日米欧で発売された中外製薬などの製品が猛追し、優位性を脅かしかねないと指摘されている。ウェバー社長はこうした見方に否定的だが、5日の株主総会では「(事業における)リスクは完璧には予測できない」とも語った。
 ウェバー社長は今後、両社の統合作業や債務負担の削減に向けた非中核資産の売却を加速。早期に統合会社の経営を軌道に乗せる方針だが、製薬業界をめぐる環境変化は激しく、思うように進むかどうかは不透明だ。 (C)時事通信社