他者の気持ちを読み取ることが苦手など、対人コミュニケーション障害から生きづらさを抱えるとされる「自閉症スペクトラム障害(ASD)」。「幸せホルモン」とも呼ばれる「オキシトシン」を鼻からスプレーする治療薬で症状の改善が見られたと、浜松医科大学などが実用化に向けた研究を進めている。これまでASDに有効な治療法はなく、全国の患者や家族らから注目を集めている。
 研究代表者で同大の山末英典教授によると、ASDは自閉症やアスペルガー症候群などを総称する診断名で、100人に1人の割合で存在。2~3歳で特徴が表れるが、大人になるまで分からず、「職場で意図せず人を怒らせてしまうなど、トラブルにつながることもある」という。
 山末教授は、ASD患者が男性に多いことに着目。女性の陣痛や母乳分泌に関わるオキシトシンが、協調性に関係するのではないかと仮説を立てた。臨床試験したところ、オキシトシンを鼻から吸引した成人男性患者は、治療前には活動が低下していた感情理解などをつかさどる脳の部位が活発化、コミュニケーション能力の向上が見られた。
 近年、ASDの認知度向上に伴い受診率が上昇。診断者数も増加傾向にあり、社会的な関心も高まるが、有効な治療法はない。山末教授は「患者や家族、社会全体にも大きな負担が生じている」と語り、早期に治療薬を開発したいと話す。
 山末教授は昨年12月、医療分野に貢献した若手研究者に贈られる内閣府の日本医療研究開発機構(AMED)理事長賞を受賞した。
 治療薬は現在、第3段階まである試験の第2段階で、全国7大学で治験を実施している。今後は、女性や子どもなどへの効果や安全性を確認し、2023年ごろまでの実用化を目指すという。 (C)時事通信社