患者本人が「何かあっても蘇生はしないでほしい」と言っていたことを家族から伝えられたら-。全国の消防が救命を基本的な任務とする中、一定の条件で蘇生を中止する地域と、原則として蘇生を継続する地域とで対応が分かれている。
 埼玉西部消防局は、蘇生中止の申し出があった場合の手順を2017年に定めた。申し出は原則としてあらかじめ本人が記名した書面で行われ、交通事故や自傷など外因性の心肺停止が疑われたり、継続を強く求める家族がいたりした際は蘇生を続ける。さらに家族に同意書への署名を求め、かかりつけの医療機関に連絡。医師から中止の指示を受けて初めて蘇生をやめるルールとした。
 18年1月~12月の間、蘇生中止の申し出は25件あり、うち13件で実際に中止。他の12件は基本的な救急処置を施し、病院に搬送した。
 同局によると、以前は家族の同意書のみで蘇生をやめたこともあったが、手順の確立後、隊員からは「確実で安心」との声が出ている。一方で「救急隊は人の命を助ける仕事。蘇生中止にストレスを感じる」との意見もあったという。
 大阪市消防局は15年、規定に照らして明らかに死亡していると判断された場合を除き、原則として蘇生を継続し搬送するよう通知した。家族らには、消防法に基づく救急活動をしなければならない旨を十分に説明するという。
 担当者は「患者本人の意思は尊重すべきである一方、消防法との折り合いが法律的に示されていない現状では、中止の選択肢を取ることはなかなかできない」と強調。それでも「社会情勢上、今後も蘇生拒否への対応は避けては通れない」と話し、他地域の動向を注視する考えだ。
 東京消防庁は、一定の条件がそろえば蘇生を中止する方針で、判断基準を設ける検討を始める。 (C)時事通信社