広島・長崎に続く「第3の核被害」から65年を経て、第五福竜丸の元乗組員2人分のカルテの現存が新たに判明した。16人分については写しの存在が分かっており、国はこれら貴重な資料を責任を持って保管し、散逸を防ぐ手だてを迅速に講ずるべきだ。
 東大病院分のカルテの所在は、研究者の間でも長年の謎だった。東大病院は昨年9月、時事通信の取材に対し「保管期間が過ぎており所在は確認できない」とした上で、「学術的に残すべき診療データは整理され、さまざまな論文や資料に残されている」として問題がないとの認識を示していた。
 しかし、被ばく半年後に亡くなった元無線長久保山愛吉さん=当時(40)=以外の診療記録は、詳細には伝えられていないのが実情だ。2010年7月には、別の病院に入院した16人分のカルテの写しの存在が判明。体温の推移や白血球数の増減、肝機能の状態を表す黄疸(おうだん)指数、輸血時期などが詳細に記されていた。東大病院のカルテにも同様の記載があるとみられる。これらの診療記録を分析すれば、例えば、被ばく線量の高さと白血球数の減り方の関係などがさらに詳細に分かる可能性もある。
 11年3月には、東京電力福島第1原発事故が発生。多くの人々が被ばくし、今も風評被害などに苦しむ。事故後の作業に従事し、白血病や甲状腺がんなどを発症した人も相次いでいる。
 被ばく事故は二度と起こしてはならない。そして国には、一度起きた事故に関しては資料を確実に保管し、医学データや治療法などの知見を後世に残す義務があるはずだ。 (C)時事通信社