児童虐待の深刻度合いなどを人工知能(AI)を使って分析し、児童相談所の業務を支援するシステムを、産業技術総合研究所などが開発した。過去の事例に基づいて一時保護の判断を手助けすることなどが狙いで、今月下旬から、三重県の二つの児相で実証実験を始める。
 産総研は、児童の年齢や性別などに加え「顔などに傷、あざがあるか」「児童が保護を求めているか」といった、児童の危険度に関する情報をデータ化。三重県の児相が2018年までの6年間に対応した記録約6000件を蓄積した。
 児相の職員が児童の様子やけがの有無、家庭環境といった調査結果を入力すると、AIは過去の記録を参考に、保護の必要性などを分析。在宅のままの支援と一時保護で、虐待が再発する確率などを比べることもできる。どのような理由で確率が高いかも明示され、職員の判断の参考になる。
 過去の似た事例も表示できるため、今後の見通しを付けやすく、対応のためのノウハウも引き継ぎやすい。対応に必要な日数も予測可能で、担当者の業務が集中しないように調整しやすくなる。
 ただ、これまでなかったような特異事例は予測が難しく、最終的には職員が意思決定する方針だ。
 5月28日の記者会見で、産総研人工知能研究センターの高岡昂太研究員は「効率化が進んで、よりリスクの高い子どもに会う時間が増やせるのではないか」と意義を強調した。
 実験に協力する三重県子ども・福祉部の中山恵里子次長は「児相は人員の大幅な不足や、ベテランの経験が引き継がれにくいなどの課題を抱える。AI活用で、こうした課題が解決できれば」と期待を示す。
 三重県以外での活用も視野に入れるが、高岡氏は「自治体ごとにデータの構造などが違い、まずは項目の標準化などが必要」と指摘。事業化するとしても、5年程度の期間が必要と話した。 (C)時事通信社