【ニューヨーク時事】米国の保守色の強い州で今年、人工妊娠中絶を厳しく制限する法律の制定が相次いでいる。米メディアによると、アラバマやルイジアナなど9州で成立。中絶の是非は米世論を二分する問題で、いずれもまだ施行されていないが、連邦最高裁の判断をにらんだ長期的な法廷闘争に発展する可能性も指摘されている。
 「この法律はすべての命が大切で、神からの贈り物であるというアラバマ州民の深い信仰の証し」。同州のアイビー知事は5月15日、中絶をほぼ全面禁止する法律に署名するに当たり、こう強調した。同法は性暴行被害や近親相姦の場合の中絶も認めず、中絶手術を行った医師に最高で禁錮99年の刑を科す内容で、「全米で最も厳しい」と報じられた。ルイジアナ州などの州法は、胎児の心拍が確認された後の中絶を禁止した。
 米国では1973年の連邦最高裁判決で中絶の権利が認められたが、保守派を中心に中絶に反対する意見が根強い。ロイター通信などの世論調査では、大半あるいはすべてのケースで中絶を合法化すべきだとの回答が全体の58%、民主党支持層では81%を占めた。これに対し、共和党支持層の55%は逆に違法にすべきだと答えた。
 州法が次々に成立している背景には、連邦最高裁判事の構成の変化がある。終身制の9人の判事で構成する最高裁は昨年、ブレット・カバノー氏が新たに判事に就任したことで保守派が4人から5人に増加し、最高裁の判断は今後、保守的な傾向を強めるとみられている。中絶を厳しく規制する法律の推進派は、一連の法律の合憲性をめぐる法廷闘争を通じ、73年の判決を覆すことを目指して攻勢を強めているとの見方がある。
 一方、リベラル派の強い州では、対抗して中絶の権利を擁護する法律制定に向けた動きが出ている。イリノイ州のプリツカー知事は31日、法案の州議会通過を受け、「われわれは命に対する最も個人的で基本的な決定に対し、女性(の判断)を信用している」と述べ、法案に署名する方針を表明した。 (C)時事通信社