ハンセン病元患者の家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決について、安倍晋三首相が控訴断念を表明したことを受け、原告らが9日、東京都内で記者会見した。元患者の家族らは「安倍首相は原告と面会して謝罪を」と要望する一方、家族全員に対する国による一律解決などを求めた。
 会見には実名を公表した原告4人や弁護士らに加え、匿名の原告も参加。原告団長の林力さん(94)=福岡市=は「正直言って当然だが、ほっとしている」と冷静に受け止めた。「どれだけ賠償金を積まれても、受けた差別や偏見には代え難い。反省しているのなら、誤った政策で培われた国民の誤った認識の解消に全力を注いで」と訴えた。
 12歳の時に鹿児島県内のハンセン病療養所に入所した父親は「患者の息子ということを隠せ」と言い続けたという。林さんは「国が過ちを認めたので、『隠す必要はなくなったよ』と報告したい」と話した。
 副団長の黄光男さん(63)=兵庫県尼崎市=は「まだ本当かなという気持ち。国は引き裂いた家族の断絶を取り戻す責任が生じた」と厳しく批判。「安倍首相は控訴を断念した理由を改めて示してほしい」と注文を付けた。
 原告の奥晴海さん(72)=鹿児島県奄美市=は「熊本地裁判決が出た6月28日は、元患者の母親の命日だった。控訴断念の一報を聞いた時は、力が抜けて涙が出てきた。安倍首相は原告と会い、心から謝罪してほしい」と強調。原田信子さん(75)=岡山市=も「自分たちがどんな苦労をしたのか話を聞いてもらいたい」と首相との面会を求めた。
 また、今なお残る偏見を恐れ、5人の原告が匿名で発言。自身が受けてきた差別について、口々につらかった思いを吐露した。
 弁護団の徳田靖之共同代表は「声を上げられない元患者の家族が全国に何人いるか正確には分からないが、全員に対する一律の解決について、国と早急に協議したい」と述べた。 (C)時事通信社