厚生労働省は年金財政検証で、さまざまな制度改正を行った場合の効果を試算した。厚生年金に加入できないパート労働者を多く対象に加えるほど、給付水準が改善することが明らかになった。政府は実現に向けて検討を進める方針だが、保険料の半分を負担する企業からは戸惑いの声が上がる。
 ◇適用拡大、検討の軸に
 制度改正を行わず現状維持のままにすれば、現役世代の手取り収入と比べた年金額の割合を示す「所得代替率」は50.8%で下げ止まる。これに対して、厚生年金の適用範囲を(1)週20時間以上働き月収が8万8000円以上の人(125万人)(2)一部を除き週20時間以上働く人(325万人)(3)月収5万8000円以上の人(1050万人)-に広げたと想定すると、(1)51.4%、(2)51.9%、(3)55.7%へそれぞれ改善する。
 制度見直しでは、適用対象範囲が焦点となる。ただ、加入で必要となる保険料負担は労使折半で、パート労働者を多く抱える小売業を中心に「新たな負担に耐えられるか」(業界団体)と、経営への影響を懸念する声が根強い。
 ◇75歳受給開始で現役並み
 もう一つの焦点である受給開始時期の選択幅拡大も試算した。現在は60~70歳の間で選べるが、75歳まで働いてから受け取れるようにすると、現役世代の手取り収入並みの年金額を確保できるとの結果が出た。また、国民年金の保険料納付を今の40年から5年間延ばした場合、所得代替率は57.6%に改善。これらの実現に向けて、高齢者が働きやすい環境をつくれるかがカギとなる。
 受給開始時期に関しては、今年度20歳の人が年金受給者になったときを想定した計算も行った。66歳9カ月まで遅らせれば、今と同じ水準の年金を受け取れる。
 ◇在職老齢年金廃止に疑問も
 一定の収入を得ると厚生年金が支給停止となる在職老齢年金制度をめぐり、65歳以上については廃止して、収入にかかわらず受け取れるよう制度改正すると、所得代替率は50.4%に悪化する。与党は先の参院選で「高齢者の就労意欲をそぐ」として見直しを公約したが、約4000億円の財源が必要で、このままでは将来世代の年金を食いつぶす形で支給せざるを得ないためだ。
 仮に実施する場合、サラリーマンの給与よりも優遇されている公的年金への課税強化によって財源を確保する案が有力視されている。ただ、高齢者就労を促す効果については「ほとんど見られないのが一般的な理解」(大和総研・佐川あぐり研究員)とされる。財務省幹部も「税制にしわ寄せするのは本末転倒。年金制度の中で検討すべきだ」と否定的だ。 (C)時事通信社