消費税率10%への引き上げまであと1カ月。社会保障の充実を目指した増税で、年4.6兆円の新たな国民の負担が生まれる。政府はキャッシュレス決済時のポイント還元などで負担軽減を図り、景気に「十二分な対策」(安倍晋三首相)を講じたと強調する。ただ、米中対立をはじめ海外経済のリスクは増大。消費税増税が景気の下押し圧力になる不安は拭えない。
 現行の8%から2%分の増税で見込まれる本来の負担増は5.7兆円だが、飲食料品などの税率を据え置く軽減税率の導入により、負担は1.1兆円軽くなる。
 政府は増税に伴う歳入分のうち、幼児教育の無償化や医療機関に支払われる診療報酬の補填(ほてん)に3.2兆円を振り向ける。急速な少子高齢化が進む日本にとって、社会保障制度の改革や充実は急務だ。
 加えて、ポイント還元や低所得者向け「プレミアム付き商品券」の発行などに2兆円規模を充てる。合計すると関連歳出は5兆円を超え、税率引き上げに伴う増収分を上回る。2014年4月の前回増税後、消費低迷が長引いたため、政府は二の舞いを避けようと必死だ。
 一方、米中貿易摩擦などで世界経済の不透明感は高まっている。内閣府の消費動向調査によると、消費者心理の明るさを示す消費者態度指数が8月まで11カ月連続で悪化し、景気は堅調とは言えない。東短リサーチの加藤出社長は「世界経済の減速懸念が強まれば、消費税増税のマイナス面が増幅される」と指摘。日本経済の落ち込みも想定される。
 首相は、海外経済を念頭に「リスクが顕在化する場合には機動的なマクロ経済政策をちゅうちょなく実行する」と追加経済対策に含みを持たせている。ただ、さらに歳出が膨らめば「何のための消費税増税だか分からなくなる」(財務省幹部)との声も多い。消費税増税は「アベノミクス」の先行きにとって重しとなりそうだ。 (C)時事通信社