消費税率が10%に上がったことで、政府が進めてきた「社会保障と税の一体改革」は一応の区切りを迎えた。ただ、少子高齢化は急速に進んでおり、放置すれば保険料を納める現役世代の負担や将来への付け回しが増すのは必至。消費税を含めたさらなる財源確保やサービスの見直しなど、あらゆる面から社会保障の「給付と負担」を見直す必要性は一層高まっている。
 今回の税率引き上げにより、新たに約5兆7000億円の税収増が見込まれる。これにより、年金額が少ない高齢者に最大年6万円を上乗せ給付する支援策などが実現。また、安倍政権により幼児教育・保育の無償化がスタートし、より多くの人を新たな社会保障サービスの対象とした。政府はこうした事業に掛かる分を除いた約2兆9000億円を、不足する社会保障財源として毎年度大量に発行する国債の抑制に充てる計画だ。
 しかし、今後予想される社会保障給付費のさらなる膨張は、今回の増収分を簡単にのみ込んでしまう。2022年度から団塊の世代が75歳以上になるのに伴い、18年度に約121兆円の給付費は25年度に約140兆円へ、40年度は190兆円程度に達する見込み。厚労省幹部は「今回の増税も焼け石に水。10%後の改革の道筋を付けなければいけない」と語る。
 一方、安倍晋三首相は7月、消費税率引き上げについて「今後10年必要はない」と言明。政府税制調査会は9月の中間答申で「人口減少・少子高齢化が進む中、消費税の役割が一層重要になっている」と指摘したものの、具体論には触れずじまい。財務省幹部は「これだけ書くのが精いっぱい」と限界を認める。
 保険料が財源の多くを占める社会保障給付費の急増に伴い、負担が現役世代に一層重くのし掛かる。今後は高齢者の医療費や介護費の自己負担引き上げといった「負担」の見直しにつながる改革案が検討される見込み。年内には1億円を超える新薬の承認が見込まれるなど「超高額薬」の登場が相次ぐ中、公的保険適用の見直しといった「給付」範囲の絞り込みも論点の一つとなる。
 ただ、国民の「痛み」に直結する見直しには反発も避けられず、政府・与党内で改革の機運は低調だ。現状を放置し将来世代へのしわ寄せを続ければ、制度の安定はますます遠ざかることになる。 (C)時事通信社