厚生労働省は、一定以上の収入がある高齢者の厚生年金を減らす「在職老齢年金制度」について、減額の基準となる収入額を引き上げ、対象者を絞る方向で検討に入る。減額の要件緩和により、新たに増える年金給付の財源をどう確保するかが課題となる。
 在職老齢年金制度は、60歳以上65歳未満なら賃金と年金を合わせて月28万円超、65歳以上なら月47万円超の人が年金の減額・停止対象。これにより年約1兆1000億円の給付が抑制されている。
 厚労省は8月に公表した年金財政検証で、同制度を65歳以上で廃止した場合や、65歳以上で「月47万円超」としている減額基準を「62万円超」に引き上げた場合の試算を示した。今月9日に開かれる社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の年金部会で、こうした試算を踏まえ、年金制度改正をめぐり議論する。
 政府・与党は同制度を「廃止も展望しつつ在り方を検討」する方針。減額措置により、高齢者の働く意欲をそいでいるとみているためだ。
 全廃には新たな給付の発生に伴い1兆円超が必要。高額所得者も年金を受け取れるようになるほか、財源の当てもなく見直せば、将来世代の年金財源を先取りする形となり、批判は避けられない。
 このため与党内からは段階的廃止や減額基準引き上げを軸に検討すべきだとの意見が強まっている。一方、有識者からは、そもそも同制度による高齢者就労への影響を疑問視する声も根強い。9日の年金部会でもこうした指摘がありそうだ。 (C)時事通信社