政府の全世代型社会保障検討会議は、年金・医療・介護を国民全体で支えるため、シニア世代も長く働き、支払い能力に応じて負担する「生涯現役」社会をつくる方向性を打ち出した。高齢者になってもある程度働き続け、社会保障給付に全面的に頼らず、「支え手」に回る姿をイメージしている。ただ、高齢者医療の膨張に歯止めをかける方策は十分に盛り込めたとは言えず、現役世代の不安払拭(ふっしょく)にはまだ遠い。
 急激な少子高齢化により、制度を支える現役世代の負担は重くなる一方だ。団塊の世代が75歳以上になり始める2022年度以降は、高齢化による社会保障費の伸びは年1兆円弱に達するとみられる。年金・医療・介護を合わせた社会保険料率(労使合計)が30%を超えるとの推計もある。
 そこで、中間報告には「『高齢者』や『現役世代』の画一的な捉え方を見直す」と明記。政府関係者は「60歳まで働いて、退職したら年金だけでのんびり過ごすようなシニア像に変化を促すものだ」と解説する。現役時ほどではないものの年金以外の収入があれば、普段の暮らしにある程度ゆとりを持て、病気や介護に備えることも可能となる。
 その具体策として、一定以上の収入がある高齢者の年金を減らす「在職老齢年金制度」は、就労意欲をそいでいると指摘される60~64歳の減額基準を引き上げる。また、年金の受け取り開始時期を75歳まで延ばせるようにし、繰り下げた分だけ受け取る月額が増える見直しを盛り込んだ。
 労働面では、企業による70歳までの就業確保義務化を視野に入れ、当面は努力規定を設ける。こうした取り組みにより、元気な高齢者らが長く働きながら社会保険料や税を納め、減り続ける「現役世代」を支えてもらう狙いだ。
 ◇高齢者負担、限定的に
 中間報告には、医療費抑制策も盛り込んだ。病院での後期高齢者窓口負担について、収入の程度に応じた支払いを求める考え方を明記。75歳以上で原則1割の負担を、22年度からは一部で2割に引き上げる。
 ただ、財務省や健康保険組合連合会などが求めていた「原則2割負担」と比べれば対象は限定的で、給付費の抑制効果は小さくなりそうだ。原則2割化には高齢者の反発を意識する与党内に「目が黒いうちは絶対に認めない」(幹部)との激しい抵抗があり、実現に至らなかった。
 論点となっていた受診時の定額負担上乗せや、市販薬と同じ成分の薬の保険適用除外については事実上見送られ、22年度までに行われる可能性がほぼなくなった。関係者からは「制度の持続可能性が担保されたとはとても言えない」(財務省幹部)との声も出ており、現役世代の負担増などに頼る状況が続きかねない。 (C)時事通信社