政府がまとめた年金制度改革では、焦点のパートら短時間労働者への厚生年金の適用拡大について、企業規模要件の一部緩和にとどまった。厚生年金への加入を促し「就職氷河期世代」の老後生活の底上げなどを図る考えだったが、限定的な見直しとなり、厚生労働省の審議会でも「不十分だ」との指摘が上がった。
 国民年金はもともと、定年がない自営業者らを念頭に置いている。満額で受給した場合は月約6万5000円で、これだけで老後生活を支えるには心もとない。未納期間などがあればさらに額は減る。
 一方、働き方の多様化を受け、当初の制度設計は実態とのずれが目立つ。会社員やその配偶者らを除く国民年金加入者の内訳を見ると、企業に雇われながら厚生年金の加入要件を満たさず、自営業者と同じ扱いの短時間労働者らが全体の約4割を占める。バブル経済崩壊のあおりを受け、不安定な雇用形態に置かれる就職氷河期世代も多数含まれるとみられる。
 政府は今回、氷河期世代支援として「勤労者皆社会保険」を掲げ厚生年金の適用拡大を検討したが、保険料折半による中小企業の経営悪化を懸念する声が与党などから続出。「従業員数501人以上」の企業規模要件をめぐり厚労省審議会では「撤廃すべきだ」との意見が多かったものの、結局2024年10月にかけて段階的に「51人以上」に下げることとなった。
 労働時間や賃金の要件は「現状維持」となり、今年8月の年金財政検証で最も適用要件を緩和した場合、対象者数は1050万人増えるのに比べ、新たな加入者は65万人にとどまる見通し。厚労省幹部は「今の見直しではこれが精いっぱい」と限界を認める。
 年金財政検証では、現役世代の手取り収入と比べた国民年金の給付水準が将来、2割台まで低下する結果も出た。ただ今回、給付水準を抜本的に改善するための保険料拠出期間延長などの議論はほとんどされずじまい。新たな税財源の確保がネックとなっているためだが、低年金で高齢者の暮らしが成り立たなくなれば、生活保護受給世帯の増加につながる可能性もある。 (C)時事通信社