【北京時事】中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎で、中国政府は31日、国内の感染者数が9692人、死者は213人に達したと発表した。昨年12月31日に市政府が原因不明の肺炎感染者を初めて公表してわずか1カ月で、2002~03年に中国から大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の全世界の感染者数8096人(03年12月時点)を突破した。新型肺炎は世界にも飛び火しており、世界保健機関(WHO)は緊急事態を宣言した。
 武漢市トップの馬国強・共産党委員会書記は31日の中央テレビの取材に「今は恥じ入り、自責の念を感じる。早く厳格な措置を取れば結果は今より良く、全国各地への影響は小さく、党中央や国務院(内閣)を心配させることも少なかった」と初動の遅れを認めた。
 発生直後は春節(旧正月)を挟んだ帰省シーズンと重なり、混乱を大きくした。中国政府は1月9日、翌日からの帰省ラッシュの見通しに関し記者会見を開いたが、この時点で感染拡大の危険性は話題にも出なかった。習近平国家主席は20日になって封じ込めを指示したが、感染は31省・自治区・直轄市の全てに広がった。
 習氏は28日、WHOのテドロス事務局長と北京で会談した際、新型肺炎を「悪魔」と呼び、「闘争」を自ら指揮していると強調した。習指導部は今、「防疫戦の勝利」に向けて全力を尽くすよう国全体にハッパを掛けている。危機を国民団結のチャンスに変える思惑もありそうだ。
 一方、湖北省黄岡市の衛生当局幹部が30日、現地入りした査察団の質問に答えられず更迭された。国家衛生健康委員会は31日の記者会見で「引き続き監督を強化する」と表明。中央に批判が向かないよう、「ガス抜き」になる地方役人の責任追及が始まっている。
 WHOの緊急事態宣言をめぐっては、国民の動揺を抑えたい中国政府が矮小(わいしょう)化を図っている。外務省の華春瑩報道局長は31日の談話で「テドロス事務局長は中国の世界への膨大な貢献を高く称賛していた」と主張。国営メディアは「WHOは旅行や貿易の制限は提案せず、中国の防疫措置を高く評価した」と伝えた。
 ◇新型肺炎をめぐる動き
【2019年】
12月31日 湖北省武漢市、原因不明の肺炎27人発生を公表
【2020年】
 1月 9日 中国専門家チーム、新型コロナウイルスによる肺炎と判断
   11日 武漢市、新型肺炎による初の死者と41人の感染を発表
   20日 習近平国家主席「まん延阻止」を指示、専門家「人から人への感染」確認
   21日 中国政府が全国集計を初公表、感染者291人
   23日 武漢市を交通遮断で「封鎖」
   24日 春節(旧正月)連休始まる
   25日 春節元日に共産党指導部が対策会議、感染者1000人突破
   27日 李克強首相が武漢市を視察、海外への団体旅行を禁止
   28日 死者100人突破
   29日 感染者6000人突破
   30日 世界保健機関(WHO)が「緊急事態宣言」
   31日 世界の感染者1万人に迫り、重症急性呼吸器症候群(SARS)上回る
(注)感染者数、死者数は発表日基準。 (C)時事通信社