7日にまとまった2020年度診療報酬改定案は、医療現場の長時間労働見直しに重点を置いた。救急患者受け入れにより医師をはじめとしたスタッフが繁忙な大病院を対象に、患者が入院した初日に限り5200円(患者負担は原則1~3割)を加算する制度の導入が柱だ。
 医師の残業時間規制が24年度に導入されるのを前に、病院が報酬を活用して人材確保などに取り組み、医療サービスを提供し続けられるよう促す。
 新設されるのは「地域医療体制確保加算」。救急車やドクターヘリによる救急搬送受け入れ件数が年2000件以上で、勤務医の負担軽減計画を策定することなどが要件。約900病院が対象となる。
 政府は20年度予算案で、診療報酬のうち人件費に当たる「本体部分」を0.55%引き上げることを決めており、このうち0.08%を働き方改革に充てる。厚生労働省はこの分を新設する加算の財源として投じる。
 今回の対応は大病院の働き方改革を目指したものであり、ここまで対象と使途を限定した加算は「前例がない」(厚労省幹部)とされる。その背景には、残業時間規制に加え、終業時刻と始業時刻に一定の間隔を置く「勤務間インターバル」なども導入されるという事情がある。医療関係者の間では「黙認されていたサービス残業も厳しくなる」とみられており、医師らスタッフの増員などが欠かせない。日本医師会は7日に記者会見を開き、「働き方改革を進めてほしい」と呼び掛けた。
 一方で、増加の一途をたどる医療費の抑制に向けた対策の強化は、次回改定以降に持ち越された。健康保険組合連合会は、市販品と類似する処方薬の保険適用見直しや、生活習慣病治療で用いられる薬を安価な後発医薬品(ジェネリック)に切り替えるよう促す仕組みづくりなどを提案したが、いずれも20年度改定案には盛り込まれなかった。
 次の改定時期に当たる22年度は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり始め、医療費はさらに急増すると見込まれる。健保連は7日の記者会見で「すぐにでも議論を始めなければいけない」と指摘した。 (C)時事通信社