【北京時事】11日付の中国共産党機関紙・人民日報によると、習近平国家主席は10日、北京市内の病院を訪れ、湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎対策活動を視察した。習氏による新型肺炎に関連した現場視察は初めて。新型肺炎の発生後、地元当局の初動が遅れた上、習氏が対応を李克強首相に丸投げするような態度を取り国民の間で不満が広がる中、重い腰を上げた形だ。
 習氏はマスクを着用し、新型肺炎患者が入院する病院を訪問。ネット映像を通じて湖北省武漢市の病院関係者を激励し、現地で指揮を執る高官とテレビ会議を行った。習氏は「武漢の情勢は依然かなり厳しい」と認めた上で、「もっと果断な措置を取らなければならない」と指摘し、早急な医療態勢の強化を指示した。
 習氏が公の場に現れたのは5日に行ったカンボジアのフン・セン首相との会談以来。習氏は7日にトランプ米大統領と電話会談し、新型肺炎対策で協力を要請するなどしたが、ウイルスのまん延におびえる一般国民にとっては「雲隠れ」の状態が続いていた。
 習氏に代わって存在感を高めているのが、肺炎対策指導グループのトップに就任した李首相。李首相は1月27日に武漢入りするなど奔走した。これまで自らに権限を集中しトップダウンの手法を取ってきた習氏のひょう変ぶりに対して、「肺炎対策の責任を李首相に押し付けている」(知識人)との見方が出ていた。
 さらに、昨年末に新型肺炎に警鐘を鳴らしたにもかかわらず、「デマを流した」として警察の処分を受けた医師、李文亮氏が2月7日に新型肺炎で死去すると、追悼ムードと共に習指導部への反発が拡大。情報公開を求める声の高まりを意識したかのように、習氏は10日の視察で「透明性のある情報公開で大衆の懸念に応える」と強調した。
 しかし、反対意見を力ずくで抑え込む習指導部の態度に変化はない。中国の人権問題を扱うサイト「維権網」によると、弁護士でジャーナリストの陳秋実氏は6日から行方不明になっている。陳氏は武漢を訪れ、当局の情報隠しや貧弱な医療態勢を批判したため拘束されたもようだ。 (C)時事通信社