【北京時事】中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が広がる中、「世界一流の海軍」を目指す習近平国家主席が進めてきた空母建造に対し、中国内で疑問の声が上がっている。武漢では感染の拡大に医療態勢が追い付いておらず、各地でマスク不足となっている事態に不満が広がっているようだ。
 19日付の中国人民解放軍機関紙・解放軍報は、初の国産空母「山東」で感染防止を心掛けながら訓練が行われたと伝えた。昨年12月に就役した山東はナショナリズムの象徴的存在でもある。ネット上では今回の訓練に対し「武力で台湾統一だ!」といった「愛国的」な感想が大半だ。
 一方で、新型肺炎がまん延する中、少数だが習指導部の軍拡路線に批判的な意見も現れた。中国版ツイッター「微博」には「軍事だけでなく衛生面の緊急事態への対応にも財政支出の重点を置くべきだ」と書き込まれた。また、「空母が幾つだろうが気にしないが、新型肺炎患者全員が少なくとも入院できることを希望している」というコメントもある。
 空母の運用には巨額の予算が必要だ。護衛のための駆逐艦や補給艦をはじめとする複数の艦艇と共に空母打撃群を構成するためだ。
 軍事情報サイトによると、山東の推定建造費は300億元(約4800億円)。艦載機や駆逐艦などの費用も合わせると、一つの空母打撃群をつくるために800億元(約1兆2700億円)程度が必要。さらに燃料や艦載機パイロットの養成に毎年、多額の予算がかかる。
 これらの費用は中国政府がこれまでに肺炎対策で計上した額に匹敵する。国営新華社通信によると、突貫工事で建設した2カ所の病院整備費を含む対策に901億5000万元(約1兆4300億円)が充てられた。
 中国は現在、上海で3隻目の空母を建造中。少なくともさらにもう1隻建造する計画があるとみられている。米国に留学経験のある30代の国際政治専門家は「経済発展で得た資金を空母に使うより、衛生・医療の充実に力を入れた方が国家は安定するはずだ」と指摘する。 (C)時事通信社