【テヘラン時事】イランで新型コロナウイルスの感染が拡大し、政府は市民の不満の広がりに神経をとがらせている。21日の国会選挙の投票率に影響が出ないよう、市民の間では「情報公開を遅らせたのではないか」といぶかしむ声もあるためだ。首都テヘラン近郊で1月に起きたウクライナ旅客機撃墜を隠蔽(いんぺい)しようとした記憶が新しい中、イラン当局が対応を誤れば、政府や体制指導部への不信感を一段と強める新たな火種となりかねない。
 「政府は何か隠そうとしていると思う」。テヘラン市内の薬局でマスクを買ったばかりの女性教師サイナさん(27)は開口一番、不満をあらわにした。「テレビを見ても選挙報道ばかりだった。新型ウイルスは生死に関わる問題で、政府はもっと国民の健康を考えてほしい」と憤る。規制が厳しいイランでは、政府発表よりも交流サイト(SNS)で情報収集する市民が圧倒的に多い。
 イランでは19日、中部コムで新型ウイルス陽性反応が出ていた高齢者2人が死亡。中東で初めての死者となった。その後も感染は広まり、24日までに12人が死亡、感染確認者は47人。中国本土以外では犠牲者数は最多だ。AFP通信によると、世界保健機関(WHO)当局者は「患者が数日で急速に増えている事態を懸念している」と語った。
 テヘラン市内では薬局に大勢の市民が詰め掛け、マスクや消毒液が品薄気味だ。国営メディアによれば、政府はマスクの販売を禁止し、代わりに政府関連施設で無料配布する方針。さらに、学校や大学、文化施設は閉鎖措置が取られ、屋内での映画や芸術イベントも中止に。バスや地下鉄の殺菌も連日実施しているという。
 国会選挙は、体制指導部が自らの威信を懸けて投票率引き上げに注力した。しかし、市民の根深い政治不信や失望感もあり、投票率は1979年のイスラム革命以降最低の42.6%だった。
 最高指導者ハメネイ師は23日、選挙前の2日間について「外国メディアは病気やウイルスを口実に、市民が投票を思いとどまるようわずかな機会も逃さなかった」と主張。低調な投票率の要因は体制への不満よりも、新型肺炎拡大にあったとする持論を展開した。 (C)時事通信社