新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、政府が唐突に打ち出した小中高校への一斉休校の要請。「もっと早くしてほしかった」「余計な不安を招く」。地域の実情が異なる中での一律的な要請に、教育の現場に混乱が広がっている。
 「数十年に1度の危機。なぜ臨時休校かを思い、適切な行動を取ってほしい」。中高一貫校の都立白鴎高校・付属中学の善本久子校長は28日、校内放送で全校生徒に呼び掛けた。
 政府の要請を受け、同校は3月に予定していた期末テストを取りやめて年度内の授業を終了。来月25日の修了式まで、不要不急の外出や部活動を禁止した。卒業式は保護者や在校生不在で行うという。同校4年(高校1年)の女子生徒は「学校と、一人で勉強するのは環境が違う。穴埋めできるか不安」と学習の遅れを懸念。野球部の4年男子生徒は「たくさん先輩から教わった。卒業式で見送れないのは寂しい」と語った。
 「退職を迎える先生にとっては最後の卒業式。縮小が決まり、放心状態になる先生もいた」と話すのは神奈川県の県立高校の女性教諭(39)。卒業式では通常、門出を迎える生徒一人ひとりの名前を呼ぶが、今回は取りやめに。「式が終わったらすぐに生徒を帰さないといけない。別れを惜しむこともできない」と肩を落とした。
 全国から集まった生徒が寮生活などを送る私立水戸啓明高校(水戸市)。茨城県内ではこれまで感染者が確認されていないが、同校は3月5日からの休校を決めた。休校中は生徒を親元へ帰すが、沖縄県や北海道の出身者もおり、公共交通機関での長時間の移動を心配する声もある。石川哲士副校長は「県内に残っていた方がいいのかも」と迷いも見せる。
 対照的な対応をするのは島根県出雲市。県内で感染者が確認されていないことなどを踏まえ、3月2日以降も市内の小中学校50校は通常通りに授業を行う。市教育委員会の植田義久教育部長は「休校になっても子どもの受け皿が整っていない。学校現場が混乱し、余計な不安を招く」と授業継続の理由を説明した。
 60人以上の感染者が確認されている北海道では、一斉休校の要請を評価する声も上がる。約15人の小学生が通う札幌市の学童保育所職員は「(職員や児童が)感染してからでは困る。もっと早く対応してほしかった」と話す。政府の要請に先立って27日から休みにしたが、保護者から「子どもを預かってほしい」との要望が多く、来月9日に再開するという。 (C)時事通信社