【北京時事】中国の習近平国家主席は湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎対策の一環として、「感動的な宣伝」を行うよう指示した。国民を団結させることが狙いだが、若い女性に自己犠牲を強いるイメージが先行。批判も出ており宣伝活動は空回り気味だ。
 「肺炎対策の最前線の感動的なエピソードを生き生きと語れ」。習氏は2月3日に開かれた肺炎対策会議で「宣伝活動の強化」を求めた。習氏は同23日にも宣伝活動について語り、「人の心を温め、結束させる雰囲気づくり」を訴えた。
 習氏の指示を反映し、官製メディアは患者の治療に当たる医療関係者の「美談」を強調している。目立つのは、若い女性看護師の奮闘ぶり。長時間のマスクとゴーグルの着用で顔にくっきりと残る跡は痛々しい。甘粛省から支援のため湖北省に向かった女性看護師のグループは、泣きながら椅子に座らされ一斉にバリカンで丸刈りにされた。ウイルス感染の防止が目的だという。
 これらの宣伝映像に対して「自分も国家に貢献しようと思った」(北京の30代女性)という反応がある一方、疑問の声も上がる。中でも、妊娠9カ月の看護師(34)が登場した国営中央テレビの番組は批判の的だ。
 この看護師は、家族や同僚の反対を押し切って、武漢市にある軍系病院の救急外来で勤務を継続。大きなおなかの目立つ防護服姿で患者の採血や体温測定などの通常業務をこなす。激務の末に酸欠になった状況や、患者から「休まないと危険だよ」と声をかけられる場面も放映された。
 中国では3000人以上の医療関係者が新型ウイルスに感染したとされる。映像の制作者には看護師の自己犠牲精神を称賛し、国民を鼓舞しようとする意図があったようだ。しかし、ネット上では「どうして出産の準備をしないのか」「感動どころか怒りを感じる」「全体のために個人を犠牲にするのはもうたくさんだ!」などという声が上がっている。 (C)時事通信社