新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、自治体の返礼品辞退や医療従事者へのいじめなどが相次いで表面化している。子どもや教諭らの感染も判明する中、2009年に新型インフルエンザの集団感染があり、中傷被害を受けた学校関係者は「予防対策の徹底など冷静な対応をして」と警鐘を鳴らす。
 病院で院内感染の疑いが発覚した和歌山県湯浅町。ふるさと納税の返礼品をめぐる問い合わせが相次いでおり、感染への不安でかんきつ類の受け取りを辞退した人もいる。「要らないから有効に使って」と善意の申し出もあるが、町は別の品への変更などで対応。担当者は「辞退されると地元生産者が潤わない」と困惑する。
 日本災害医学会(東京)は2月22日、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で感染者の搬送などをした医療従事者が、職場で「ばい菌」扱いされたり、子どもの保育園への登園自粛を求められたりするなど、不当な扱いを受けたと声明を発表。「もはや人権問題ととらえるべき事態で強く抗議する」と改善を求めた。
 「『この町から出ていけ』との電話が数十件あった」。09年5月に新型インフルエンザの集団感染が発生した大阪府茨木市の関西大倉中学・高校の古川英明校長(65)は、当時の心無い中傷に今も心を痛める。
 同校は当時、在校生約1900人のうち、約100人の感染が判明し、休校。インターネット掲示板には制服の画像とともに「見たら近づくな」「学校に近づくとうつるぞ」と書き込まれ、制服のクリーニングを拒否された生徒もいた。職員も学校までのタクシー乗車を拒否された。
 約2週間後、私服登校を認めて学校が再開した際、古川校長は国立感染症研究所の医師が講演で「君たちが悪いのではない」と生徒を元気づけたことが忘れられない。
 古川校長は「感染症は誰がかかってもおかしくない。人を傷つけるだけの中傷ではなく、冷静に手洗いやうがいなど感染予防に徹してほしい」と話した。 (C)時事通信社