2012年成立の新型インフルエンザ対策特別措置法は、首相が「緊急事態」を宣言すれば、対象地域で住民の外出や集会を制限できるほか、病床を確保するための土地収用なども可能になる。ウイルスの急速なまん延を防ぐ上で有効とされる半面、人権上の問題を指摘する声も根強い。
 現行の特措法は、(1)新型インフルエンザ(2)過去に世界的に流行した再興型インフルエンザ(3)未知の新感染症―が対象。政府は新型コロナウイルスに適用するには法改正が必要との立場だ。
 政府は専門家の見解も踏まえ、今後1~2週間が「急速な拡大に進むか終息できるかの瀬戸際」(安倍晋三首相の2月29日の記者会見)と判断。感染拡大を阻止するため、大規模イベントの自粛や全国の小中高校などの臨時休校を呼び掛けてきたが、こうした要請に法的拘束力はない。
 特措法を改正して緊急事態を宣言すれば、対象地域に指定された都道府県の知事は、住民に対し学校や興行施設の使用を制限したり、催し物の中止を指示したりできる。仮にウイルスの封じ込めに失敗し、感染者が爆発的に増えた場合は、臨時医療施設を開設するため、所有者の同意を得ずに土地・建物を使用することも可能だ。
 ただ、こうした強制措置については、旧民主党政権が検討を進めていた当時から、日本弁護士連合会などが強い懸念を示してきた。特措法は12年4月、野党だった公明党の賛成も得て成立したが、共産、社民両党は反対した。
 同法施行は自民、公明両党の政権復帰後の13年4月で、実際に緊急事態が宣言された例はない。首相は4日の参院予算委員会で、新型コロナウイルス対応に関し「緊急事態宣言は直ちに実施するということではない。最悪の事態を想定し、それも可能とすることが必要だと判断した」と語り、法改正に理解を求めた。 (C)時事通信社